1. はじめに|フリーランスにとって源泉徴収は「所得税の前払い」です

フリーランスとして初めて請求書を作成したとき、「あれ?報酬額から10%くらい引かれてる…なんで?」と驚いた方も多いのではないでしょうか。その天引きされた金額こそ、「源泉徴収」された所得税です。

多くのフリーランスが、この制度を「よくわからない」「手取りが減って損している」と感じてしまいがちです。しかし、源泉徴収は決して損をする制度ではありません。正しく理解すれば、確定申告で払いすぎた税金が戻ってくることもあります。

この記事では、源泉徴収の基本的な仕組みから、あなたの仕事が対象になるかどうかの判断、そして確定申告で損をしないための具体的な処理方法まで、わかりやすく解説します。

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2. そもそも源泉徴収とは?会社員との違い

① 源泉徴収の仕組みと目的

源泉徴収とは、報酬を支払う側(クライアント)が、受け取る側(あなた)の代わりに所得税をあらかじめ差し引いて国に納める制度です。これは、国が税金の徴収漏れを防ぎ、納税をより効率的に行うために設けられています。

つまり、あなたの報酬から引かれた金額は、誰かに取られたのではなく、あなたの代わりにクライアントが所得税を前払いしてくれたものなのです。

② 会社員の「年末調整」とどう違う?

会社員の場合、毎月の給与から所得税が天引きされ、年末に会社が「年末調整」で税額を確定させてくれます。そのため、自分で確定申告をする必要はほとんどありません。

一方、フリーランスは源泉徴収された額を「所得税の前払い分」として扱い、1年間の収入と経費を計算して「確定申告」で最終的な納税額を自分で計算する必要があります。

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3. あなたの仕事は対象?源泉徴収の対象となる業務

① 所得税法で定められた8つの対象業務

フリーランスの報酬がすべて源泉徴収の対象になるわけではありません。所得税法で定められた特定の業務が対象となります。

源泉徴収の対象となる主な業務(報酬)
  • 原稿料や講演料、デザイン料
  • 弁護士、税理士、司法書士などへの報酬
  • 映画、演劇、芸能の出演料
  • プロスポーツ選手、モデルなどへの報酬

たとえば、ライター、デザイナー、イラストレーター、カメラマンなどの報酬は、源泉徴収の対象になることが多いです。一方で、Webサイト制作やシステム開発の報酬は、原則として源泉徴収の対象にはなりません。

② 報酬の「種類」と「支払い側」で判断する

報酬を受け取るあなたが「個人」であれば、上記の対象業務に該当する場合は源泉徴収されます。一方、あなたが法人を設立して報酬を受け取る場合は、原則として源泉徴収は必要ありません。

また、クライアントによっては、念のためすべての業務で源泉徴収を行うケースもあります。不明な場合は、事前にクライアントに確認しましょう。

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4. 損しないための必須知識!源泉徴収額の計算方法

実際にあなたの報酬からいくら引かれるのか、計算方法を学びましょう。

① 基本の税率と計算式

源泉徴収の税率
  • 100万円以下:報酬額 × 10.21%
  • 100万円超:(報酬額 - 100万円) × 20.42% + 102,100円

この税率には、所得税に加えて「復興特別所得税」が含まれています。

② 消費税は源泉徴収の対象になる?

原則として、報酬と消費税を合わせた「税込金額」が源泉徴収の対象です。しかし、請求書で「報酬」と「消費税」の金額を明確に分けて記載していれば、報酬額(税抜)のみを源泉徴収の対象とすることができます。

この方法を使えば、源泉徴収額を少なく抑えられるため、請求書を作成する際はぜひ活用してください。

③ 実際の計算例で理解を深める

事例①:報酬10万円(税抜)の場合

・報酬額: 100,000円
・源泉徴収額: 100,000円 × 10.21% = 10,210円
・手取り額: 100,000円 - 10,210円 = 89,790円

事例②:報酬150万円(税抜)の場合

・報酬額: 1,500,000円
・源泉徴収額:(1,500,000円 - 1,000,000円)× 20.42% + 102,100円 = 204,200円
・手取り額: 1,500,000円 - 204,200円 = 1,295,800円

5. 実務で役立つ!請求書と確定申告のポイント

源泉徴収を正しく処理するための実務的なポイントを解説します。

① 請求書にはどう書く?

多くのクライアントは源泉徴収を前提としていますが、トラブルを防ぐためにも、請求書には「源泉徴収税額」の項目を設け、引かれる金額を明記しましょう。クライアントが源泉徴収しない場合も、その旨を事前に確認しておくことが大切です。

② 確定申告ではどう処理する?

確定申告書Bには、「源泉徴収税額」を記入する欄があります。そこに1年間で源泉徴収された合計額を記入することで、すでに前払いした所得税として控除されます。

この合計額は、クライアントから発行される「支払調書」で確認できます。支払調書は、翌年の1月頃にクライアントから送られてくるので、必ず保管しておきましょう。

③ 払いすぎた税金は「還付金」として戻ってくる

年間の収入から経費を差し引いた最終的な所得税額よりも、源泉徴収された合計額が多い場合、払いすぎた分は「還付金」として指定口座に振り込まれます。特に開業初年度や、経費が多い場合は還付金が戻ってくる可能性が高いです。

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6. まとめ|源泉徴収は怖くない!正しく理解して賢く納税しよう

源泉徴収は、フリーランスとして活動する上で避けて通れない制度です。しかし、その仕組みを正しく理解すれば、決して難しいものではありません。

「なぜ引かれるのか」「いくら引かれるのか」「確定申告でどう処理するのか」という3つのポイントを押さえて、クライアントとのやり取りや確定申告をスムーズに進めましょう。正しい知識は、あなたの税務処理に対する不安を解消し、よりスマートなフリーランス生活を送るための力になります。

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