フリーランス(個人事業主)は労災保険に加入できる?労災保険や加入すべき保険を徹底解説

フリーランス常識

2021.09.02

フリーランス(個人事業主)として働く上で最も大きなリスクは、ケガや病気による休業です。
フリーランス(個人事業主)は、毎月安定した収入を得られる会社員とは異なり、働けなくなった時点でいきなり収入が無くなる不安を常に抱えています。

日本では、ケガや病気で働けなくなっても企業が補償してくれる「労災保険」が制度化されていますが、雇用主がいないフリーランス(個人事業主)の場合、労災保険に加入することはできるのでしょうか。

この記事では、労災保険とフリーランス(個人事業主)の関係や、フリーランス(個人事業主)が休業した場合の補償制度などについて解説してきます。

特に下記の方にこの記事を一読していただきたいです。
・フリーランス(個人事業主)として既に活躍をされている方
・フリーランス(個人事業主)を将来的に検討している方
・労災保険について理解を深めたい方

 

 

 

1.労災保険とは?


フリーランス労災保険関連画像
フリーランス労災保険関連画像

労災保険(正式名称: 労働者災害補償保険)とは、雇用されている立場の人が業務中の事故でケガや病気に見舞われた場合、もしくは死亡してしまった場合に、必要に応じて保険給付を行う社会保険制度です。

労働者が安心して働けるように、安全衛生の確保や支援、被災した場合の遺族の生活補償などを目的としています。

 

業務中に発生した労働災害だけではなく、通勤途中に事故にあった場合などの通勤災害も補償の対象です。

一人でも労働者を雇っている事業主は労災保険への加入を義務付けられており、保険料は全額事業主側の負担です。

 

正社員だけではなく、パート、アルバイト、日雇いなど、その事業所で働くすべての労働者が被保険者対象となります。

 

会社員における労災保険

労災保険加入は会社の義務であり、会社員は入社当日から補償の対象となります

社内で起きた事故のケガはもちろん、業務上必要な外出や出張先でのケガについても補償の対象となります。

 

病気については、労働環境に存在する有害因子(有害な化学物質、病原菌、肉体面・精神面への過度な負担など)によって健康上悪影響を受けた場合、補償の対象です。

長時間労働やハラスメントに起因するうつなどの精神障害も、労災認定された場合は補償の対象となります。

 

労災保険の大まかな補償内容は以下のとおりです。

療養(補償)給付: 労働者がケガや病気の治療を行った場合の補償
休業(補償)給付: 労働者がケガや病気で働けず休業する場合の補償
障害(補償)給付: 労働者がケガや病気で後遺症が残った場合の補償
遺族(補償)給付: 労働者がケガや病気で亡くなった場合の遺族への補償
葬祭料葬祭給付: 労働者がケガや病気で亡くなった場合の葬祭費用の補償
傷病(補償)年金: 労働者のケガや病気が1年6ヶ月を経過しても傷病が治っていない場合の補償
介護(補償)給付: ケガや病気による後遺症が残った場合の介護費用
二次健康診断等給付: 定期健康診断で見つかった異常の再検査費用

参考: 厚生労働省: 労災保険給付の概要


健康保険や厚生年金などの他の社会保険と異なり、従業員側に保険料の負担はありません。

なお、役員は従業員ではないため、原則として補償の対象外です。

 

 

フリーランス(個人事業主)における労災保険

労災保険は、原則として雇用されている立場の人を補償する保険制度です。

フリーランス(個人事業主)の場合はどのような扱いとなるのでしょうか。

 

フリーランス(個人事業主)などの自営業者は事業主にあたります。

つまり、フリーランス(個人事業主)は労働者側ではなく、雇用する事業主側となるため基本的に労災保険への加入はできません。

 

ただし、条件を満たした場合は特別に任意加入が認められており、これを「特別加入制度」といいます。詳細は事項にて解説します。

 

 

 

2.労災保険の特別加入制度と加入条件とは?


フリーランス労災保険関連画像
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フリーランス(個人事業主)でも、特定の条件を満たした場合に労災保険へ加入できる制度「特別加入制度」について解説します。

特定加入制度の対象となる自営業者は、一人親方などと呼ばれる、労働者を雇用せずに下記の業務に従事する人です。

 

個人タクシーや個人トラック運送など、自動車を使用する旅客業や貨物運送業従事者
大工や左官工、とび職人などの土木業、建築業従事者
漁船による漁を行う漁師
林業従事者
医療品の配置販売業者
廃棄物収集や運搬、解体業者
船員法第1条に規定する船員

 

一般的にフリーランス(個人事業主)としてイメージされるような、プログラマーやWebデザイナーなどを生業とする個人事業主は上記に含まれません。

 

2021年9月1日からフリーランスエンジニア/デザイナーも加入対象へ

2021年9月1日よりフリーランスエンジニア/デザイナーも労災保険へ特別加入できるようになっています。

対象に入るフリーランスエンジニア/デザイナーは以下です。

ITコンサルタント 
プロジェクトマネージャー 
プロジェクトリーダー 
システムエンジニア 
プログラマ 
サーバーエンジニア 
ネットワークエンジニア 
データベースエンジニア 
セキュリティエンジニア
運用保守エンジニア 
テストエンジニア
社内SE
製品開発/研究開発エンジニア 
データサイエンティスト 
アプリケーションエンジニア 
Webデザイナー 
Webディレクター など


労災保険加入の手続きはフリーランス個人では出来ず、既にITフリーランスの特別加入団体として承認をされた団体を通じて、または新規にITフリーランスの特別加入団体を設立して、加入申請書等を所轄の労働基準監督署長を経由して都道府県労働局長に提出する必要があります。

 

ITフリーランスの団体による申請も9月1日より受付開始ですが、まだ特別加入団体となったITフリーランスの団体はありません。

しかし「一般社団法人ITフリーランス支援機構」が特別加入団体の申請を9月中に行うことを明らかにしています。

 

保険料は個人負担です。また保険料率は(3/1000)です。

そのため給付額の計算の基礎となる「給付基礎日額」に365を掛けた値の1000分の3が年間保険料となります。

 

また給付基礎日額を基に、ケガや病気をした場合の療養費や休業時の給付、障害が残った際の年金額などが決められます。

以下年間保険料の早見表をご覧ください。

 

フリーランス労災保険関連画像
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政府が労災保険の特別加入制度対象範囲拡大を明示

2020年、労災保険の対象となるのは、労働者および一部の自営業者に限られています。

しかし多様な働き方を推進する一環として、政府は特定加入制度への加入条件を拡大する方針を発表し2021年1月以下のような「労働者災害補償保険法施行規則等の一部を改正する省令(令和3年厚生労働省告示第11号)」が公布されています。

 

特別加入の対象となる事業として、柔道整復師が行う事業を新たに規定すること。
特別加入の対象となる特定作業として、放送番組(広告放送を含む。)、映画、寄席、劇場等における音楽、演芸その他の芸能の提供の作業又はその演出若しくは企画の作業であって、厚生労働省労働基準局長が定めるもの及びアニメーションの制作の作業であって、厚生労働省労働基準局長が定めるものを新たに規定すること。

 

上記施行期日は2021年4月1日からとなっています。

 

 

 

3.フリーランス(個人事業主)が労災保険の代わりに加入すべき保険4選


フリーランス労災保険関連画像
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近い将来、フリーランス(個人事業主)が特定加入制度の対象となる可能性はありますが、現時点でフリーランス(個人事業主)は労災保険に加入できません。

現在フリーランス(個人事業主)として働いている方には万が一働けなくなった場合に備えて、労災保険に代わる補償制度への加入を強くおすすめします。

 

提供する団体ごとに、いくつか紹介します。

 

フリーランス協会所得補償制度

フリーランス協会所得補償制度は、フリーランス協会が、損保ジャパン日本興亜と安田保険センターとの協業により提供している、会員向けの保険プランです。

フリーランス協会は、「フリーランスという働き方の社会における認知向上」、「キャリア形成の支援」、「労働環境の改善」の3つの理念を主軸とし、フリーランスの地位向上をめざす団体として2017年1月に発足しました。

参考:一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会

 

所得補償制度は以下の3つの保険がセットに含まれる点が特徴です。

病気やケガで働けなくなった場合の補償
ケガの入院費や通院費などの傷害補償
介護サポート

 

補償制度へ加入するためには、フリーランス協会の一般会員として登録する必要があります。

参考までに、所得保証制度に加入した場合の保険料の一例を紹介します。

 

「30歳/事務職/女性/独身」の条件で「年収400万円」の場合、毎月の保険料は4,113円です。個人で同様の保険に加入するよりも割安で、所得補償が月額280,000円の他、死亡保険や入院・通院保証などが保証に含まれる、手厚い内容となっています。

 

詳しくは公式ホームページの保険料シミュレーションをご確認ください。

 

 

あんしん財団に加入

あんしん財団は、中小企業向けに傷害保険や福利厚生サービスを提供する団体です。

元々は「財団法人中小企業経営者災害補償事業団(略称・経災団」として発足しましたが、2015年の一般財団法人化に伴い「一般財団法人あんしん財団」となっています。

 

2021年3月時点の会員数は約56.6万人。うち46%が建設業や製造業の従事者です。

参考:一般財団法人あんしん財団

 

一人当たり月2,000円(うち保険料1,700円)の会費で、以下3つのサービスがすべて利用できます。

ケガの補償(業務上、業務外にかかわらず24時間の補償)
福利厚生(定期健康診断の補助金など)
災害防止(職場の安全衛生環境向上に対する補助金、セミナーなど)

 

死亡保険金2,000万円、後遺障害最高2,000万円の他、入院日額6,000円、通院日額2,000円は1日目からの保証を受けられるのが特長です。

 

加入の要件は中小企業である法人、または個人事業主です。

そのためフリーランス(個人事業主)でも加入できます。

 

ただし、他の事業所に雇用されている兼業フリーランスの場合、契約者としては加入できない点に留意しましょう。

 

 

日本フルハップ公益財団法人

関西を中心に、障害保険や福利厚生サービスを提供するのが、日本フルハップ公益財団法人です。

日本フルハップは、1988年7月に「財団法人 近畿中小企業経営者災害補償事業団」として設立。

 

2013年4月に公益財団法人としての認定を受け、同時期に特定保健業としての認可を取得しています。

参考:日本フルハップ公益財団法人

 

会費は一人当たり月1,500円で、以下の保証や福利厚生が受けられます。

ケガの補償(業務上、業務外にかかわらず24時間の補償)
ケガの防止(職場の安全衛生設備導入や環境改善に対する助成金)
福利厚生(人間ドック受診の助成金、保養施設、観劇招待など)

 

死亡・障害補償は最高1,000万円の他、入院日額5,000円、通院日額2,500円が1日目から補償されます。

 

加入要件はあんしん財団と同様であり、中小企業である法人または個人事業主です。

そのため、フリーランス(個人事業主)でも加入できます。

 

なお、前項で紹介したあんしん財団は関西の支部がありませんので、関西で活躍をしているフリーランス(個人事業主)の方はご利用をおすすめします。

 

 

全国商工会議所の休業補償プラン

全国商工会議所の休業補償プランは、商工会議所が会員向けに提供する所得補償制度です。

ケガや病気により休業せざるを得ない状況になった際、休業前の所得と公的保証の差額分を補填する目的で設けられました。

 

生活基準を落とさずに療養に専念することが可能です。

参考:商工会議所会員向け休業補償プラン

 

補償の特徴は以下の通りです。補償対象が広く内容も手厚い補償となっています。

入院中だけではなく、自宅療養期間中も補償対象
病気の補償(業務外での病気も24時間補償・新型コロナウイルス含む)
ケガの補償(業務外でのケガも24時間補償・天災、国内外のケガ問わず)
加入時医師の診察が不要で加入手続きが簡単
家事従事者も加入可能
介護も補償対象(介護離職防止対策のため)
精神障害も補償対象
補償期間は最長1年(免責期間: 7日間)

 

休業補償プランは、日本商工会議所が包括保険者として保険会社と契約しており、加入者は全国各地の商工会議所会員です。

スケールメリットにより団体割引が適用されるため、保険料は同等の個人保険よりも低価格に設定されています。

 

また、プログラマーやWebデザイナーとして在宅・リモートワークで活躍している方はケガの確率が低いため、さらに割安に設定される傾向があります。

 

上記の休業補償を受けるためには商工会議所の会員になる必要があります。フリーランス(個人事業主)の場合開業届の提出も要件に含まれる点に留意しましょう。

なお、引き受け元の保険会社によって、付帯サービスの内容などが一部異なります。

 

 

 

4.まとめ 


フリーランス(個人事業主)と労災保険の関係や、労災保険に代わる各種補償制度について解説しました。

今回の記事の内容をまとめると以下の通りです。

 

労災保険は、労働者が労働災害を被った場合の補償制度です。
フリーランス(個人事業主)の多くは現状労災保険に加入できないが、特別加入制度の範囲が拡大されれば、今後加入できるようになる可能性があります。

ITフリーランスは2021年9月1日より労災保険の特別加入が可能になっています。
フリーランス(個人事業主)向けに各種団体が傷病保険や休業補償制度を提供しています。

 

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