フリーランスは下請法を知っておこう!下請法の概要から深い知識まで徹底解説!

フリーランス常識

2021.10.28

フリーランスエンジニアとして活動している方であれば、「下請法」について何度か耳にしたことがあるのではないでしょうか。


下請法は、フリーランス(個人事業主)をはじめとする下請事業者の利益を保護する目的で作られた法律です。下請法の内容を知らずに企業との業務委託契約を結ぶと、思わぬトラブルに巻き込まれるかもしれません。


この記事では、フリーランス(個人事業主)が自分の立場を守るために知っておくべき下請法について、概要や基礎知識、活用方法について詳しく解説します。

 

 

 

1.下請法とは?


下請法とは関連画像
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下請法(正式名称:下請代金支払遅延等防止法)とは、下請取引の公正化、およびフリーランス(個人事業主)や中小企業など、下請事業者の利益保護を目的として作られた法律です。

私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の特別法として、昭和31年(1956年)6月1日に制定されました。

 

下請法制定後も、時代の変化に伴う働き方の多様性に沿う形で、何度か改定が重ねられています。

フリーランス人口が増えるにつれ報酬の遅延や未払い、買い叩きなど、フリーランス(個人事業主)と親事業者間のトラブルは後を絶ちません。

 

最近では、取引上弱い立場に置かれがちなフリーランス(個人事業主)のため、法的保護の考え方をまとめたガイドラインの制定や、下請法の更なる改正などが検討されています。

 

 

 

2.下請法の対象となる取引


下請法とは関連画像
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下請法の対象となる取引は、大別すると4種類に区分されます。

それぞれの取引項目ごとに解説します。

 

製造委託

製造委託とは、物品の製造や販売を行っている事業者が、企画、品質、デザインなどを指定した上で、フリーランス(個人事業主)や中小企業など、他の事業者に対して製造や加工を委託することです。

例えば、自動車、電化製品などの部品や金型の製作を他の事業者へ委託する場合、製造委託に該当します。

 

ここで定義される物品とは動産全般のことを指しており、家屋や事務所など不動産は対象から外れます。

 

 

修理委託

修理委託とは物品の修理を業として請け負う事業者が、他の事業者に修理作業を委託したり、自社で使用する物品の修理を外注したりすることです。

修理作業の委託であれば、修理行為の範囲に関わらず対象となります。

 

修理とは失われた元来の機能を回復することであり、点検やメンテナンスなどの委託は修理委託には含まれません。

 

 

情報成果物作成委託

情報成果物の制作を行う事業者や、情報成果物を提供する事業者が他の事業者に対して作成を委託することを情報成果物作成委託といいます。

情報成果物とは、ソフトウェア、Webコンテンツ、動画、各種デザインなどです。

 

プログラムやアプリケーションソフトも情報成果物ですから、フリーランスエンジニアが企業から受注する依頼の多くは、情報成果物作成委託に該当します。

アニメやテレビ番組、ポスターのデザインや設計図の外注も、情報成果物作成委託です。

 

 

役務提供委託

役務提供委託とは、事業者が請け負った役務(サービス)を他の事業者に委託することです。

運送業務やソフトウェアのサポートサービスなどが役務(サービス)に含まれる他、修理委託に含まれない点検作業やメンテナンスも役務提供委託の対象です。

 

なお、建設業の事業者から委託された建築工事は役務対象委託には含まれません。

建設工事の下請負については、建設業法によって別途規定されているためです。

 

また事業者自身が役務(サービス)を利用する場合、例えば貨物運送のみを請け負う事業者が貨物の梱包を委託するような場合は、役務提供委託の対象外です。

 

 

 

3.親事業者(クライアント・企業)と下請事業者(フリーランス・個人事業主)の定義


下請法とは関連画像
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親事業者(クライアント・企業)と下請事業者(フリーランス・個人事業主)については、下請法の第2条第2項から第8項によって、次のように定義されています。

 

まず、「物品の製造」「修理委託」「政令で定める情報成果物作成委託および役務提供委託」の場合は、以下の通りです。

親事業者
(クライアント・企業)
下請事業者
(フリーランス・個人事業主)
資本金3億円超 資本金3億円以下
資本金1千万円超・3億円以下 資本金1千万円以下

 

なお、「政令で定める情報成果物作成委託および役務提供委託」とは、プログラムの作成委託・運送・物品の管理・情報処理の委託などを指します。

 

上記以外の「情報成果物作成委託および役務提供委託」、例えば商品デザイン・設計図面の作成・ビルメンテナンス・コールセンター業務などの委託については、以下のように定義されます。

親事業者
(クライアント・企業)
下請事業者
(フリーランス・個人事業主)
資本金5千万円超 資本金5千万円以下
資本金1千万円超・5千万円以下 資本金1千万円以下

 

請け負う業務の内容によって、それぞれの定義が異なることを覚えておきましょう。

 

 

 

4.親事業者(クライアント・企業)が遵守する4つの義務


下請法とは関連画像
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フリーランス(個人事業主)を始めとした下請事業者の利益を守るため、親事業者には4つの義務が課せられています。

現在フリーランス(個人事業主)として親事業者との契約を結んでいる方は、この機会に義務の内容について確認しておきましょう。

 

書面の交付義務

フリーランス(個人事業主)として仕事をする上で、具体的な取り決めがないままの取引はトラブルの原因となります。

下請法では、親事業者がフリーランス(個人事業主)などの下請け業者へ業務を発注する場合、必要事項が記載された発注書を直ちに発行することが義務づけられています。

 

この発注書を「3条書面」といいます。

3条書面に記載するべき必要事項は、法律で下記のように定められています。

 

見積を提出する段階で、すべての項目について決めておきましょう。

3条書面に記載するべき必要事項:

親事業者(クライアント・企業)と下請事業者(フリーランス・個人事業主)の名称
業務を委託した日
下請事業者(フリーランス・個人事業主)の給付内容(品名・規格などを明確に)
下請事業者(フリーランス・個人事業主)の給付を受領する期日(納期)
下請事業者(フリーランス・個人事業主)の給付を受領する場所(納入場所)
下請事業者(フリーランス・個人事業主)の給付内容について検査をする場合、検査完了の期日
下請代金の額(具体的な金額もしくは算定方法の記載)
下請代金の支払期日
手形を交付する場合は、手形の金額および満期
一括決済方式で支払う場合は、金融機関名、貸付けまたは支払い可能額など
電子記録債権で支払う場合は、電子記録債権の額および満期日
原材料などを有償支給する場合は、品名、数量、対価や決済方法など

 

 

支払期日を定める義務

予定通りにプロダクト(成果物)を納品したにも関わらず、クライアントからの支払いが無く困った経験はありませんか。

フリーランスにとって、支払の遅延は大きな問題です。

 

下請法ではフリーランス(個人事業主)をはじめとした下請け事業者の経営悪化を防ぐため、あらかじめ支払期日を定めることが義務づけられています。

支払期日は発注した物品などを親事業者が受領した日から起算して60日以内で、できる限り短い期間で定めなければなりません。

 

なお、役務提供委託の場合、受領日は下請事業者が役務の提供をした日となります。

 

 

取引記録の書類作成や保存の義務

下請法では納品・検収後のトラブルに対応するため、親事業者に対して取引記録に関する書類の作成、および2年間の保存を義務として定めています。

親事業者が作成・保管する書類を「5条書類」といいます。

 

5条書類への記載が定められている内容は以下の通りです。

5条書類に記載するべき必要事項:

下請事業者(フリーランス・個人事業主)の名称
業務を委託した日
下請事業者(フリーランス・個人事業主)の給付内容(品名・規格などを明確に)
下請事業者(フリーランス・個人事業主)の給付を受領する期日(納期)
下請事業者(フリーランス・個人事業主)から受領した給付の内容および給付を受領した日
下請事業者(フリーランス・個人事業主)の給付の内容について検査をした場合、検査完了日、検査の結果および不合格の場合の給付の取り扱い
下請事業者(フリーランス・個人事業主)給付の内容について、変更ややり直しをさせた場合、内容および理由
下請代金の額(具体的な金額もしくは算定方法の記載)
下請代金の支払期日
下請代金の額に変更があった場合、変更後の額および理由
支払った下請代金の額、支払日および支払の手段
手形を交付した場合は、手形の金額、交付日および満期
一括決済方式で支払うこととした場合、金融機関からの貸付け額または支払い可能額と期間の始期、ならびに親事業者が金融機関へ支払った日
電子記録債権で支払うこととした場合、電子記録債権の額、期間の始期および満期日
原材料などを有償支給した場合、品名、数量、対価や決済日、決済方法
下請代金の一部を支払った、もしくは原材料などの対価を控除した場合、その後の下請代金の残額
遅延利息を支払った場合,遅延利息の額および遅延利息を支払った日

 

 

遅延利息の支払義務

定められた支払期日までに所定の支払いが行われなかった場合、親事業者はフリーランス(個人事業主)などの下請事業者に対して遅延利息を支払う義務があります。

遅延利息が課せられる期間は、親事業者が物品などを受領した日から起算して60日を経過した日から、実際に支払う日までです。

 

親事業者は遅延日数に応じ、未払金額に年率14.6%を乗じた額を支払う義務があります。

 

 

 

5.親事業者(クライアント・企業)の違法行為があった時は?


下請法とは関連画像
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フリーランス(個人事業主)が親事業者と取引する上で、違法行為があった場合やトラブルが発生した場合、「下請けかけこみ寺」を活用しましょう。

下請かけこみ寺とは、中小企業庁が設置している、フリーランス(個人事業主)や中小企業が抱える取引上の問題をサポートするための相談窓口です。

 

企業間取引や下請法に詳しい相談員からアドバイスを受けられる他、必要に応じて弁護士無料相談や、裁判外紛争解決手続(ADR)の依頼も可能です。

下請けかけこみ寺の窓口は、本部(全国中小企業振興機関協会)および各都道府県の中小企業振興機関、全国合わせて48か所に設置されています。

 

クライアント・企業との取り引きについて悩みを抱えているフリーランス(個人事業主)の方は、まずは近隣の相談窓口に連絡してみることをおすすめします。

 

下請かけこみ寺の活用事例

下請かけこみ寺の活用事例について、フリーランス(個人事業主)が請け負う業務に関わる事例を一部抜粋してご紹介します。

 

事例1:代金未払い

プログラムの作成業務を請け負い親事業者に納品したが、代金の一部しか支払われなかったため、下請かけこみ寺に相談。

相談員からのアドバイスを踏まえて親事業者から「債務残高確認書」を書いてもらい、後日支払ってもらえた。

 

事例2:代金減額

親事業者から開発試験の一部を依頼されたため、見積を提出。契約金額について、双方合意の上で仕様に基づく試験を行ったにもかかわらず、請求額が高すぎると減額を要請された。

下請かけこみ寺からのアドバイスを受け、下請け代金法で禁止されている「減額」のおそれがあることを踏まえて親事業者と交渉したところ、契約金額通り支払ってもらえた。

 

事例3:代金未払いに対する裁判外紛争解決手続(ADR)の活用

親事業者からサイト作成を請け負い、代金410万円を請求したところ、納期の遅延や、請求額が契約金額を上回ったこと理由に支払いが留保された。

なお、納期の遅延や請求額の増額は、作業開始後に親事業者からの追加作業依頼があったためとしている。

 

追加作業が当初契約に含まれるかを争点に争われ、調停人を交えた話し合いが行われた。

3か月の調停を経て、親事業者から下請事業者へ250万円が支払われ、和解が成立した。

 

上記以外の活用事例については、下請かけこみ寺活用事例集をご参照ください。

 

 

 

6.まとめ


フリーランス(個人事業主)が知っておくべき下請法の概要や基礎知識、活用方法について解説しました。

「クライアントに意見を言うのは、今後の関係や力関係を考えると難しい」と考えるフリーランス(個人事業主)の方もいるかもしれません。

 

しかし、あらかじめ下請法を知っておくことで、万が一トラブルが発生した場合に適切な対応が可能です。

フリーランス(個人事業主)も下請法で守られていることを理解しつつ、有効に活用できるよう知識を深めましょう

 

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