公開日:2020.11.25
更新日:2025.03.24
独占禁止法という名前の法律を聞いたことがあるフリーランスの方もいらっしゃるかと思います。しかし、その内容を正確には理解していないというケースもあるでしょう。
独占禁止法の正式名称は、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」です。
独占禁止法の目的は、公正で自由な競争を促進して、事業者が自由に活動できるようにすることです。具体的にはどういった事が禁止されているのでしょうか。
そこで今回は、独占禁止法について説明します。
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<目次>
1.フリーランスの現状の問題
独占禁止法で禁止されている優越的地位の濫用とは
フリーランスと優越的地位の濫用の関係性
2.独占禁止法がフリーランスに適用されるのか?
フリーランス人口が増加している
フリーランスに対する制度的保護が必要である
多様な雇用形態の促進
3.フリーランスの独占禁止法が適用された場合
適正かつ正当な報酬が支払われる
フリーランスとして適材適所な配置に行ける
4.独占禁止法上の違法となりうるパターン
秘密保持義務・競業避止義務
専属義務
成果物に係る権利制限
5.まとめ
フリーランスの現状の問題について見ていきましょう。
優越的地位の濫用とは、自分の取引上の地位が相手より優越している当事者がその地位を利用して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を取引相手に与える行為のことを言います。
この行為は、独占禁止法により、不公正な取引方法の一類型として禁止されています。
a.取引上の地位が相手より優越しているとは?
取引上の地位が相手より優越している、とはどういった状況なのでしょうか。
立場の優越している当事者が市場を支配しているような地位、又は、それに近いような絶対的に優越した地位であることは必要条件ではありません。
単純に、取引の相手との関係で相対的に優越した地位であれば、取引上の地位が相手より優越しているという状況にあてはまると考えられます。
言い変えると、取引上の地位が相手より優越しているという状況は、立場の弱い方の当事者(フリーランスなど)が、立場の強い方の当事者(企業を含むクライアントなど)との取引の継続が困難になることによって、経営上大きな支障をきたすような状態のことです。
そういった状況であれば、立場の強い方の当事者(企業を含むクライアントなど)が、立場の弱い方の当事者(フリーランスなど)にとって、著しく不利益な要請等を行っても,立場の弱い方の当事者(フリーランスなど)は受け入れないといけないようなことがおこるでしょう。
実際に、取引上の地位が相手より優越しているかどうかを判断する上では、取引依存度、立場の強い方の当事者(企業を含むクライアントなど)の市場における地位、立場の弱い方の当事者(フリーランスなど)が取引先を変更できるかどうか,その他立場の強い方の当事者(企業を含むクライアントなど)と取引することの必要性を示す具体的事実を総合的に考慮する必要があります。
さらに言うと、一方の当事者がもう一方の当事者に対し取引上の地位が優越しているかどうかは,次の(1)から(4)までの具体的事実を総合的に考慮して判断します。
企業とフリーランスの間だけでなく,フリーランス同士の取引においても、取引の一方当事者がもう一方の当時者に対し,取引上の地位が優越していると認められる場合があることを考慮しておく必要があります。
ここでは、立場の弱い方の当事者をフリーランスAと定義し、立場の強い方の当事者をフリーランスBと定義して考えてみましょう。
(1)立場の弱い方の当事者(フリーランスA)の立場の強い方の当事者(フリーランスB)に対する取引依存度
立場の弱い方の当事者(フリーランスA)の立場の強い方の当事者(フリーランスB)に対する取引依存度は、立場の弱い方の当事者(フリーランスA)が立場の強い方の当事者(フリーランスB)に商品やサービスを供給する取引の場合には、立場の弱い方の当事者(フリーランスA)の立場の強い方の当事者(フリーランスB)に対する売上高を、立場の弱い方の全体の売上高で割って算出されます。
立場の弱い方の当事者(フリーランスA)の立場の強い方の当事者(フリーランスB)に対する取引依存度が大きい場合には、立場の弱い方の当事者(フリーランスA)は立場の強い方の当事者(フリーランスB)と取引を行う必要性が高くなります。
そのため、立場の弱い方の当事者(フリーランスA)にとって、立場の強い方の当事者(フリーランスB)との取引の継続が困難になることが経営上の大きな支障となりやすいと言えます。
(2)立場の強い方の当事者(フリーランスB)の市場における地位
立場の強い方の当事者(フリーランスB)の市場における地位としては、立場の強い方の当事者(フリーランスB)の市場におけるシェアの大きさや順位などが考慮されます。
立場の強い方の当事者(フリーランスB)のシェアが大きい場合やその順位が高い場合には、立場の強い方の当事者(フリーランスB)と取引することで立場の弱い方の当事者(フリーランスA)の取引数量や取引額の増加が期待できるため、立場の弱い方の当事者(フリーランスA)は立場の強い方の当事者(フリーランスB)と取引を行う必要性が高くなります。
そのため、立場の弱い方の当事者(フリーランスA)にとって、立場の強い方の当事者(フリーランスB)との取引の継続が困難になることが経営上の大きな支障となりやすいと言えます。
(3) 立場の弱い方の当事者(フリーランスA)にとっての取引先変更の可能性
立場の弱い方の当事者(フリーランスA)にとっての取引先変更の可能性としては、他の事業者との取引開始や取引拡大の可能性、立場の強い方の当事者(フリーランスB)との取引に関連して行った投資等が考慮されます。
他の事業者との取引を開始もしくは拡大することが困難である場合や立場の強い方の当事者(フリーランスB)との取引に関連して多額の投資を行っているという場合には、立場の弱い方の当事者(フリーランスA)は立場の強い方の当事者(フリーランスB)と取引を行う必要性が高くなります。
そのため、立場の弱い方の当事者(フリーランスA)にとって、立場の強い方の当事者(フリーランスB)との取引の継続が困難になることが経営上の大きな支障となりやすいと言えます。
(4) その他、立場の強い方の当事者(フリーランスB)と取引することの必要性を示す具体的事実
その他、立場の強い方の当事者(フリーランスB)と取引することの必要性を示す具体的事実としては、立場の強い方の当事者(フリーランスB)との取引の金額、立場の強い方の当事者(フリーランスB)の今後の成長可能性、取引の対象となる商品やサービスを取り扱うことの重要性、立場の強い方の当事者(フリーランスB)と取引することによる立場の弱い方の当事者(フリーランスA)の信用の確保、立場の強い方の当事者(フリーランスB)と立場の弱い方の当事者(フリーランスA)の事業規模の相違等が考慮されます。
立場の強い方の当事者(フリーランスB)との取引の金額が大きい、立場の強い方の当事者(フリーランスB)の事業規模が拡大している、立場の強い方の当事者(フリーランスB)が立場の弱い方の当事者(フリーランスA)に対して商品やサービスを供給する取引においてその商品やサービスが強いブランド力を持っている、立場の強い方の当事者(フリーランスB)と取引することで立場の弱い方の当事者(フリーランスA)の取り扱う商品やサービスの信用が向上する、立場の強い方の当事者(フリーランスB)の事業規模が立場の弱い方の当事者(フリーランスA)の事業規模よりも著しく大きいという場合には、立場の弱い方の当事者(フリーランスA)は立場の強い方の当事者(フリーランスB)と取引を行う必要性が高くなります。
そのため、立場の弱い方の当事者(フリーランスA)にとって、立場の強い方の当事者(フリーランスB)との取引の継続が困難になることが経営上の大きな支障となりやすいと言えます。
b.不利益を与える行為とは?
ここまで、取引上の地位が相手より優越しているとはどのような状況なのかについて詳しく説明してきました。
では、不利益を与える行為とはどのような行為なのでしょうか。
具体的には以下の通りです。
(1)継続して取引する相手に対して、その取引に係る商品やサービス以外の商品やサービスを購入させること。
(2)継続して取引する相手に対して,金銭,サービスその他の経済上の利益を提供させること。
(3)取引の相手から届いた取引に係る商品の受領を拒むこと、取引の相手から取引に係る商品を受領した後にその商品をその取引の相手に返品すること、取引の相手に対して取引の対価の支払を遅らせること、取引の金額に関する条件を取引の相手方にとって不利益となるように設定したり、変更したりすること、取引の相手方に不利益となるような取引を実施すること。
なお、優越的地位の濫用として問題となるのは、これらの行為に限られるわけではありません。
優越的地位の濫用として問題となる様々な行為を未然に防止するためには、取引の対象となる商品やサービスの具体的内容や品質に係る評価の基準、納期、代金の額、支払期日、支払方法等について、取引当事者間であらかじめ明確にして、書面で確認するなどの対応をしておくことが望ましいと言えます。
c.何故独占禁止法が必要か?
ここまで独占禁止法について説明してきましたが、そもそも、何故独占禁止法が必要なのでしょうか。
事業者がどのような条件で取引するかについては、取引当事者間の自主的な判断に委ねられるものです。
そのため、取引当事者間での自由な交渉の結果、いずれか一方の当事者の取引条件が相手や今までと比べて不利なものになることは,あらゆる取引において、当然起こりえることです。
しかし,自分の取引上の地位が相手に優越している当事者が、取引の相手に対し、その地位を利用して、正常な商慣習に照らした際に不当といえるような方法で不利益を与えることは、その取引の相手の自由で自主的な判断による取引を阻害します。
さらにその取引の相手はその競争者との関係において競争上不利となるにもかかわらず、不利益を与えた当事者は、その競争者との関係において、競争上有利となる恐れがあります。
このような行為は公正な競争を阻害する恐れがあることから、不公正な取引方法の一つである優越的地位の濫用として、独占禁止法により規制されています。
公正な競争を阻害とは?
どのような場合に公正な競争を阻害する恐れがあると考えられるのかについては、問題となる不利益の程度や行為の広がり等を考慮して、個々の事案ごとに判断することになります。
例えば,①多数の取引の相手に対して組織的に不利益を与える場合や②特定の取引の相手に対してしか不利益を与えない場合であっても、その不利益の程度が強い場合やその行為を放置すれば他に波及する恐れがあるという場合には、公正な競争を阻害するおそれがあると考えられます。
取引する相手の地位が、取引上、フリーランスより優越している場合、フリーランスは不当に不利益を被る可能性があります。
フリーランスは優越的地位の濫用の被害者および加害者になる可能性があると言えます。
独占禁止法は法人と法人との間の取引だけに限らず、法人とフリーランス、フリーランスとフリーランスとの間の取引にも適用されます。
ここでは、独占禁止法がフリーランスに適用される背景について説明します。
令和元年に発表した内閣府の分析によれば、フリーランス人口は341万人と増加傾向にあります。
そのため、優越的地位の濫用に関連しているフリーランスの数も増加している傾向にあると考えられます。
フリーランスのおける保護制度が未だに不明確であることが多く、発注者(特に企業)との契約の際格差が生じることがあります。
フリーランスとして弱い立場にあるにもかかわらず、従来型の雇用関係における「労働者」には該当しません。
フリーランスは労働基準法や最低賃金法等による保護が受けられず、制度的な保護が極めて不十分な状況にありました。
フリーランスの人口が増加している以上、独占禁止法を含むフリーランスに対する保護が社会的満足度を高めます。
そのため、フリーランスに対する制度的保護が必要であると言えるでしょう。
フリーランスへの不当な不利益を避けてこそ、フリーランスとして働く人の数が増えます。
そのため、多様な働き方がなされると言えます。
また日本における多様な雇用形態の促進として、従来の「メンバーシップ型雇用」に替わり、「ジョブ型雇用」が薦められています。
「ジョブ型雇用」とは、従業員に対して、ジョブ・ディスクリプション(職務記述書)により職務内容を明確に定義し、労働時間ではなく成果で評価する雇用システムのことです。
欧米では主流となっている「ジョブ型雇用」に日本では現在関心が集まっている背景としては、コロナショックが挙げられます。
コロナショックにより、テレワークや在宅勤務が増加することで、職務内容を基準として成果に応じて報酬が支払われるべきだとの考えが今まで以上に浸透しつつあります。
フリーランスの独占禁止法が適用された場合について解説していきます。
独占禁止法では対価を一方的に設定することを禁止しています。
そのため、フリーランスの取引に独占禁止法が適用された場合には、フリーランスに適正かつ正当な報酬が支払われると考えられます。
独占禁止法による保護を受ければ、不当に不利益を被ったまま業務を強制されるということはないため、フリーランスとして適正な取引相手との取引を行えるようになります。
独占禁止法がフリーランスに適用されることで、規制の対象となる行為を紹介します。
秘密保持義務とは,業務上知りえた秘密を、相手の許可なく使用したり開示したりしてはならない義務のことです。
競業避止義務とは、第三者から金銭を受け取って、もしくは自分または第三者の名義で、地位を利用して、契約相手の事業と競争的な性質の取引をしてはならない義務です。
過大な秘密保持義務・競業避止義務は、独占禁止法上、問題となる場合があります。
しかし、その目的に照らして合理的な範囲で課される場合、即座に独占禁止法上問題となるものではありません。
専属義務とは、サービスの提供者に対してサービスを享受する側が自分とだけ(専属として)取り引きするように課す義務のことです。
合理的な範囲を超えた専属義務は、独占禁止法上、問題となる場合があります。
委託者が受託者に対して取引上優越した地位において、その地位を利用して、受託者に対し成果物に係る権利等に関する一方的な取扱いを行う場合は、優越的地位の濫用として問題を生じやすいと考えられます。
ここまで独占禁止法で禁止されている優越的地位の濫用について詳しく見てきました。
独占禁止法と優越的地位の濫用についてしっかりと理解できたという方もいらっしゃることでしょう。
フリーランスにとっても独占禁止法に関する知識は必要なものであると言えます。
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