公開日:2022.05.26
更新日:2025.03.24
ITに関わるエンジニア職には、非常に多くの種類があります。
その中でも、超上流工程に携わるエキスパートとして知られているのが、「ITストラテジスト」です。
経営に関わる提案を行うことも多いITストラテジストには、近年多くの需要が集まっています。
そこでこの記事では、ITストラテジストの試験概要や仕事内容、ITストラテジスト資格を取得するメリットや年収について解説します。
特に以下の方には、この記事をご一読いただきたいです。
・ITストラテジストの資格取得を検討している方
・ITストラテジストの試験概要を知りたい方
・ITストラテジストの仕事内容を知りたい方
・ITストラテジストの年収目安を知りたい方
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<目次>
1.ITストラテジスト試験概要
ITストラテジストとは
ITストラテジスト受験対象者
試験形式・出題範囲(午前I)
試験形式・出題範囲(午前II)
試験形式・出題範囲(午後I)
試験形式・出題範囲(午後II)
ITストラテジスト試験の難易度
2.ITストラテジストの仕事内容
IT戦略の策定
IT導入の計画策定
プロジェクトマネジメント
最新技術のキャッチアップと自社への還元
3.ITストラテジストを取得するメリット
日本ITストラテジスト協会への入会
転職に有利になる可能性がある
現職での評価に繋がる可能性がある
4.ITストラテジストの年収
5.まとめ
この章では、ITストラテジスト試験の受験対象者や出題形式、出題範囲、難易度などの概要についてお伝えします。
ITストラテジストとは、「strategist(軍司・戦略家)」の名前を持つ、システム開発の上流工程や事業戦略の段階から参画する上流エンジニア職です。
「経営とITをつなぐ存在」として、情報技術を生かした基本戦略の策定・提案などを行います。
ITストラテジストの業務範囲は、以下の通り非常に多岐にわたります。
<ITストラテジストの業務例>
・経営戦略に基づいたIT戦略の策定
・ITを活用した事業革新や業務改革
・競合との差別化を図れる製品・サービスの企画・創出
上記を確認すると、ITストラテジストの業務領域は単なるエンジニアとしてのものだけでなく、経営社目線でビジネスの要所に参画するものであることがよく分かります。特にCIOやITコンサルタントを目指すのであれば、取得がおすすめされる資格です。
ITストラテジストは、2009年に認定が開始(それまでは上級アドミニストレータ試験という試験区分でした)されました。非常に難関とされている国家資格であり、その収入やキャリアパスには非常に魅力があります。
ITストラテジストの受験対象者は、以下のように定義されています。
高度IT人材として確立した専門分野をもち、企業の経営戦略に基づいて、ビジネスモデルや企業活動における特定のプロセスについて、情報技術(IT)を活用して事業を改革・高度化・最適化するための基本戦略を策定・提案・推進する者。
また、組込みシステム・IoTを利用したシステムの企画及び開発を統括し、新たな価値を実現するための基本戦略を策定・提案・推進する者
(引用:情報処理推進機構HP)
上記の通り、IT専門職としての高度な知識・スキルに加えて、ITを活用した事業戦略策定や経営戦略の提案などを行える人物が、受験対象者として想定されています。
しかしITストラテジスト試験には受験資格などは一切なく、年齢や学歴等に関わらず誰もが受験できる試験です。
そういった意味では、実力次第で誰もが取得できる資格であるとは考えられるでしょう。試験地も全国主要都市にあり、幅広い方に門戸を開いている試験です。
ITストラテジスト試験は、午前I・午前II・午後I・午後IIに分かれています。
午前I試験の概要は、以下の通りです。
試験時間 |
9:30~10:20(50分) |
出題形式 |
多肢選択式(四肢択一) |
出題数・解答数 |
出題数:30問 |
配点・基準点 |
配点 :100点満点 |
午前I試験は応用情報技術者試験試験の午前問題から、30題が選ばれて出題されます。具体的には、以下の3系統、23分野からの出題です。
<午前I試験の出題範囲>
テクノロジー系 |
・基礎理論 |
マネジメント系 |
・プロジェクトマネジメント |
ストラテジ系 |
・システム戦略 |
午前II試験の概要は、以下の通りです。
試験時間 |
10:50~11:30(40分) |
出題形式 |
多肢選択式(四肢択一) |
出題数・解答数 |
出題数:25問 |
配点・基準点 |
配点 :100点満点 |
午前II試験の出題範囲は、先ほど午前I試験で紹介した23項目の内、以下の8分野です。
<午前II試験>
・セキュリティ
・システム戦略
・システム企画
・経営戦略マネジメント
・技術戦略マネジメント
・ビジネスインダストリ
・企業活動
・法務
一見すると午前I試験よりも出題範囲が狭まったように思われますが、その分出題内容が高度になっている点が特徴です。
常識の範囲で答えられる問題はないと考えておくべきであり、日ごろから新用語に対する理解を深めておくことが求められます。
午後I試験の概要は、以下の通りです。
試験時間 |
12:30~14:00(90分) |
出題形式 |
記述式 |
出題数・解答数 |
出題数:4問 |
配点・基準点 |
配点 :100点満点 |
午後I試験では、以下の点に関する理解を記述式で求められます。
<午後I試験の試験範囲>
・業種ごとの事業特性を反映し情報技術を活用した事業戦略の策定、または支援に関すること
・業種ごとの事業特性を反映した情報システム戦略と、全体システム化計画の策定に関すること
・業種ごとの事業特性を反映した個別システム化構想・計画の策定に関すること
・事業ごとの前提や制約を考慮した情報システム戦略の実行管理と評価に関すること
・組込みシステムの企画、開発、サポートおよび保守計画の策定・推進に関すること
午後II試験の概要は、以下の通りです。
試験時間 |
14:30~16:30(120分) |
出題形式 |
記述式 |
出題数・解答数 |
出題数:3問 |
配点・基準点 |
配点 :なし |
午後II試験の出題範囲は、午後I試験と同様です。ただし合否は点数で決められるのではなく、論述に対する総合的な評価をA~Dの4段階に分けてランクAのみを合格とします。
評価は論述の具体性や論理の一貫性、見識に基づく主張か否か、文章作成能力・表現力などを総合的に判断して行います。
ただし問題冊子で示す「解答にあたっての指示」に従わない場合、論述をどんなに良く書けていても評価が下げられることがあるため要注意です。
ITストラテジストは複数あるエンジニア系資格の中でも、スキルレベル4に該当する最難関資格の1つです。
論文試験もあるため、深いレベルの理解が無ければ満足のいく解答を記述することはできません。また、論理的な文章の作成能力も問われます。
合格率は15%程度であり、基本情報技術者試験の合格率が20〜30%程度であることからも、難度の高さが分かるでしょう。
合格するためには、非常に深い知識・理解が求められると考えておくべきです。
最後の論文試験においてランクA以外は不合格となってしまう点も、本資格試験の難度を挙げている要因の1つだと考えられます。
時には、士業(税理士や司法書士など)の試験と同じ程度の難関であると表現されることもあり、試験対策は充分に行っておくことが重要です。
この章では、ITストラテジストの仕事内容についてお伝えします。
ITストラテジストの仕事内容としてまず挙げられるのが、IT戦略の策定です。
企業の現状や業務内容を把握し、システム導入の必要性や情報技術の活用方法を策定します。
クライアント企業の利益となる戦略(業務効率化やコストカットなど)を考え出すのが、基本的な業務内容だと考えられるでしょう。
企業の業務内容や課題を把握するためには、基本的にクライアント企業の元へ実際に出向き、実態の把握に努めます。
現場社員へのヒアリングについても、必要に応じて実施します。また、実効性のある戦略提案においては、IT業界全体の動向把握も欠かせません。
業界の動向やクライアント企業の実態を把握することではじめて、課題や問題が把握できるようになります。
経営者に提案し実行した戦略を正しく評価し、フィードバックすることも重要な仕事の1つです。
このように、ITエンジニアとしての面と業務コンサルとしての面の両方が、ITストラテジストには求められます。
IT導入の計画策定も、ITストラテジストの重要な仕事の1つです。
全体的なシステムの導入においては、戦略を実行するうえでの基盤構成を考えます。
中長期的な目線で計画を考え出し、品質統制やリスク、災害時の復旧計画なども策定しなければなりません。
個別システムかにあたっては、全体システム導入を計画する中で対象となった業務を分析してモデルを構築、プロセスの再設計を行います。
サービスレベルとコスト、そしてスケジュールを比較し、実現可能なラインで導入計画を立てなくてはなりません。
たとえば、「契約管理を電子化してデジタルで行いたい」というニーズがある場合、ただ単に「ツールを導入すれば良い」と考えるだけでは不十分です。
「どこまでの範囲を電子化するのか」「既存の紙の契約書の電子化はどうするのか」「電子化後の組織変更は?」などさまざまなことを考えなくてはなりません。
さらに、導入後はシステム全体のモニタリングや管理も実施します。リスクマネジメントを実施し、プロジェクトの評価を行うことも重要な仕事です。
ケースによっては、ITストラテジストがそのままプロジェクトマネジメントを行うこともあります。
本来のITストラテジストの業務目的は、ITの活用による経営戦略の実現です。
そのためシステムを開発導入するまでが業務領域であり、その後のスケジュール管理や工程管理は業務範囲外だと言えます。
しかし、幅広く業務を任されるケースもあり、システム開発後もそのままプロジェクトの推進役を担うこともあるのです。
本来は別の職種ですが、場合によっては境界があいまいになることはあります。
プロジェクトマネジメントまで実施できるITストラテジストであれば、市場価値はより高いと考えられます。
最新技術のキャッチアップと自社への還元も、ITストラテジストに求められる業務の1つです。
プログラミング知識・スキルを基本として、ITストラテジストには非常に多種多様な知識を求められます。
ソフトウェア・ハードウェアや法律的な知識など、数え出したらきりがありません。
そうした必要知識に関して常に最新情報をキャッチアップし、自社に還元していくスタンスは、ITストラテジストにとって非常に重要です。
ITストラテジストは非常に難度の高い資格ですが、それだけに取得には多くの魅力があります。
そこでここでは、ITストラテジストの資格を取得するメリットについてお伝えします。
ITストラテジストの資格を取得するメリットとしてまず挙げられるのが、日本ITストラテジスト協会(JISTA)に正会員として入会できることです。
日本ITストラテジスト協会とは、情報化戦略・情報化計画などの情報交換や相互研鑚によってエンジニアの実務能力の向上と人脈形成を図ることを目的とした組織です。
ITストラテジスト資格を取得し日本ITストラテジスト協会に入会すると、同じ専門家同士での知的交流や情報交換、議論の場を持つことができます。
年会費は少しかかりますが、社外のエンジニア・知識者との交流の場を持つことは、エンジニアにとっては大きなメリットです。
他のエンジニアから刺激を受けたり最新の知識・情報を仕入れたりと、さまざまなメリットが考えられます。
エンジニアとして成長し続けるために、エンジニアの組織に加入できることは大きなメリットです。
ITストラテジストの資格を持っていると、転職に有利になる可能性もあります。
近年では急速なテクノロジーの発達によってさまざまな業務が誕生していますが、その担い手であるエンジニア人材が不足していると感じている企業が多くあります。
特に超上流工程を担当するITストラテジストの有資格者は貴重であり、転職に有利に働く可能性は充分に考えられるでしょう。
ただし、ITストラテジストには幅広い業務知識が求められます。
実際に面接でITストラテジストの資格について聞かれた場合、取得理由・目的はしっかりと答えられるようにしておくことが必要です。
取得理由や目的をしっかりと答えられなかった場合、返ってマイナスイメージを持たれてしまうことも考えられます。
つまり、ITストラテジストの資格は確かに転職に有利ですが、「持っているだけで合格確率が上がる」とまで考えるのは危険でしょう。
やはり自分の強みをしっかりとアピールするための、試験戦略が重要です。
ITストラテジストの資格を持っていると、現場での評価につながる可能性もあります。
ITスキルや知識は、どんなに優秀なエンジニアでも客観的に証明することは困難です。しかし資格を持っていれば、どんな相手に対しても実力を客観的に証明できます。
名刺に有資格者であることを記載することで、ITコンサルにおいて高い知識を持っていることを簡単に証明できます。社内での評価に関しても、資格を取得したことを報告すれば昇進に有利に働く可能性があるでしょう。
「有資格者=仕事ができる」とまでは言えませんが、少なくとも専門家として求められる知識を持っていることはアピールできます。
新たな仕事に挑戦する際に、プラス要素として働くことも考えられます。
特にITコンサルタントやシステムを企画する業務に携わる人は、積極的に取得を検討したいところです。
企業の経営にかかわる立場の方も、取得することで評価をあげることにつながる可能性があります。
非常に高度なスキル・知識を求められるITストラテジストですが、実際の年収はどれくらいなのでしょうか。
フリーランススタートに掲載されている求人情報によると、月収ベースでは50万円〜95万円の価格帯が中心でした。
年収に換算すると600万円〜1,140万円であり、このあたりが年収の目安であると考えられるでしょう。
(参考:フリーランススタート)
その他にも600〜700万円程度が平均とされていることも多く、一般的な職業はもちろん他のエンジニアと比較しても高年収の職業であると考えられるでしょう。
ITストラテジスト案件を見てみる↓
ITストラテジストとは、ITに関する知識・スキルを駆使して、経営戦略や事業戦略の立案を行う専門職です。
非常に高度な専門知識を必要とするため、資格試験の合格は難関だと言えます。
しかし、難関の試験であるために、その後のキャリアに与える好影響は非常に大きいと言えるでしょう。
年収も通常のエンジニアよりも高い水準であり、特にシステム開発や経営に関わる方には取得をおすすめしたい資格です。
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