公開日:2020.12.16
更新日:2025.03.24
フリーランス(個人事業主)が引っ越す際には、会社員よりも住所変更の手続きが多めに必要です。とはいえそこまで難しくないため、方法や書式を確認しながらであれば、誰でも簡単に行なえます。
ただし、手続きを疎かにしていると、確定申告や保険関係でトラブルが起きるかもしれません。正しい方法と必要なものを事前に理解しておきましょう。
当記事ではフリーランス(個人事業主)の住所変更の際に必要な手続きや注意点について解説します。
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<目次>
1.フリーランス(個人事業主)として住所変更(引っ越し)する際は手続きが必要
税務関連の手続き
・所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書
・個人事業の開業・廃業等届出書
・給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
・預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書
社会保険関連の手続き
<国民年金>
・健康保険・厚生年金保険適用事業所名称/所在地変更(訂正)届
・健康保険・厚生年金保険適用事業所関係変更(訂正)届
<国民健康保険>
同一市区町村内で住所変更(引っ越し)をする場合
・健康保険・厚生年金保険適用事業所関係変更(訂正)届
2.フリーランス(個人事業主)として住所変更手続き時の注意点
控えを保管しよう
提出期限を守ろう
マイナンバーを取り扱っている場合は、細心の注意を!
3.フリーランス(個人事業主)の住所変更の手続方法
窓口で手続きする
郵送で手続きする
e-Taxで手続きする
4.住所変更(引っ越し)後、どの税務署に確定申告を提出すれば良い?
5.まとめ
フリーランス(個人事業主)として住所変更(引っ越し)する際は、税務関連・社会保険関連(国民年金・国民健康保険)の手続きが必要です。
また、引っ越し前と引っ越し後の住所を管轄する役場でも手続きが発生します。
それぞれ順番に見ていきましょう。
税務関係の手続きには、最大で4枚の書類の作成・提出が必要になります。
どれも特別な知識や方法は要りません。記載内容の情報や添付資料を整理し、手続きを進めていきましょう。
(出典:国税庁:所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書)
「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出手続」とは、納税地の異動が発生した際に届け出る書類です。
納税地として届け出ている「住所地」もしくは「事業所の所在地」を、他の場所に変更したいときに提出します。
・住所地が納税地の場合:転居(引っ越し)があったときに提出
・事業所の所在地が納税地の場合:事務所の移転があったときに提出
フリーランス(個人事業主)のケースでは、たとえば「自宅から新しく構えた事務所の住所に納税地を変更する」などです。
書類に記載する内容を見ていきましょう。
・書類上部の「所得税」と「消費税」の当てはまらない方を二重線で消す
・移転前の住所を管轄する税務署を記載する
・提出する年月日を記載する
・納税地と納税地以外の住所等を記載する(住んでいる場所と納税地が違うときなど)
・事業主の氏名と生年月日を記載する
・マイナンバー(個人番号)を記載する
・屋号を記載する
・変更前と変更後の納税地の住所を記載する
・住所を変更する理由を記載する
・事業所の屋号・住所・事業内容を記載する
提出先は「変更前の税務署」です。変更後の税務署ではないため注意しましょう。
直接持参するか、郵送にて提出します。持参の場合は「時間外収受箱」を利用しての提出も可能です。
郵送の場合は信書扱いになるため、ゆうパック・ゆうメール・ゆうパケット・クリックポスト以外で送付しましょう。
提出時にはマイナンバーカードと本人確認書類のチェックがあるため、持参するかコピーの添付を行ってください。
提出期限に明確な日にちは決まっていませんが、国税庁では「納税地の異動があった後、遅滞なく」と明記されていますので、早めの提出を心がけましょう。
フリーランス(個人事業主)としてマイナンバーカードについて詳しく知りたい方は下記記事をご一読ください↓
(出典:国税庁:個人事業の開業届出・廃業届出)
フリーランス(個人事業主)として開業したときに提出した「個人事業の開業届出・廃業届出書(いわゆる開業届)」も、住所変更の際に再度提出が必要になるケースがあります。たとえば次のケースです。
・事務所を移転した場合
・事務所を新設した場合
記載する内容を見ていきましょう。
・移転前の住所を管轄する税務署を記載する
・提出する年月日を記載する
・納税地と納税地以外の住所等を記載する
・事業主の氏名と生年月日を記載する
・マイナンバーを記載する
・職業・屋号を記載する
・届出の区分を「移転」または「新設」「増設」にチェックする
・自社事業に当てはまる所得にチェックを入れる
・移転した日付を記載する
・「廃業の事由が法人の設立に伴うものである場合」は空欄にする
・「開業・廃業に伴う届出書の提出の有無」は移転だけであればどちらも無にチェックする
・自社事業の概要を記載する
・「給与等の支払いの状況」は現在の従業員の状況を記載する
・「源泉徴収税の納期の特例に承認に関する申請書の提出の有無」は現在の状況を記載する
・「給与支払を開始する年月日」は現在の状況を記載する
提出先は「変更前の税務署」です。窓口への持参・時間外収受箱への投函・信書扱いでの郵送のどれかで提出しましょう。
提出期限は、移転の事実があった日から1ヶ月以内です。
(出典:国税庁:給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書)
「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」とは、自分以外の従業員を雇って給与を支払うフリーランス(個人事業主)の事務所等を開設・移転・廃止する際に提出する書類です。
ただし、「給与支払を開始する年月日」を記載した「個人事業の開業届出・廃業届出書」を提出しているときは、こちらの書類を作成する必要はありません。
記載する内容を見ていきましょう。
・「給与支払事務所等の開設・移転・廃止」の移転部分に丸を付ける
・移転前の住所を管轄する税務署を記載する
・提出する年月日を記載する
・現在の納税地の住所や氏名(名称)を記載する
・事務所を移転した年月日を記載する
・「届出の内容および理由」の「所在地の移転」にチェックを入れる
・「給与支払事務所等について」にて異動前・異動後の住所を記載する
・給与を支払う従業員の数を記載する
提出先は「変更前の税務署」です。前述の2枚と同じく、窓口への持参・時間外収受箱への投函・信書扱いでの郵送のどれかの方法での提出になります。
提出期限は、移転の事実があった日から1ヶ月以内です。
(出典:国税庁| 申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税(個人事業者)の振替納税手続による納付)
「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書」とは、所得税や復興特別所得税、消費税・地方消費税などの振替納税(金融機関の預金口座からの振替で納税する方法)を申請するための書類です。
フリーランス(個人事業主)は住所・事務所の移転によって納税地を変更する場合、振替納税の手続きをもう一度行う必要があります。忘れないようにしましょう。
記載する内容は次のとおりです。
・納税地の住所を管轄する税務署を記載する
・口座振替を利用しない税目を二重線で抹消する
・口座振替の利用を開始する申告等の納期限以前の日付を記載する
・口座振替を行う金融機関の情報を記載する
・住所等を記載する
・預貯金口座の名義を記載する
・銀行の口座番号等を記載する
提出先は「変更後の新しい税務署」もしくは「振替依頼書に記載した金融機関」です。
ここまでの3枚の書類とは提出先が異なるので注意してください。
こちらの書類は窓口・郵送の他にも、e-Taxを利用したオンライン申請が可能です。
フリーランス(個人事業主)としてe-Taxを使い、確定申告を行っている方はおすすめします。
提出期限は振替予定の国税の納期限(所得税であれば原則3月15日)までになるので、対応する国税の期限を確認しておきましょう。国税庁のホームページにて確認できます。
フリーランス(個人事業主)として住所変更する際の社会保険関連の手続きには、健康保険・厚生年金保険にかかわる事務所の変更に関する書類の作成が必要です。
フリーランス(個人事業主)として住所変更する際の国民年金について解説します。
(出典:日本年金機構|適用事業所の名称・所在地を変更するとき(管轄内の場合))
「健康保険・厚生年金保険適用事業所名称/所在地変更(訂正)届」とは、健康保険や厚生年金の適用を受けている事務所の、名前や住所の変更を申請するときに提出する書類です。
具体的には、次のケースに当てはまる事業主が提出します。
・同一の年金事務所の管轄地域内で所在地を変更するとき
・適用事務所の名称を変更するとき
・同一の年金事務所の管轄地域内で所在地および名称を変更するとき
記載内容を見ていきましょう。
・「適用事務所名称/所在地変更届」の所在地を丸で囲む
・事務所整理番号、事務所番号を記載する
・事務所の所在地、名称、事業主の氏名を記載する
・変更区分の「2.事務所所在地の変更」を丸で囲む
・変更前の所在地を記載する
・変更後の事業所所在地にて事業を開始した日を記載する
・変更後の事業所の名称・所在地を記載する
・所在地を変更した理由を詳細に記載する
提出先は、事務所の所在地を管轄する年金事務所です。窓口持参や郵送、電子申請にて提出します。
書類とともに、提出日からさかのぼって90日以内に発行した「事業主の住民票のコピー(個人番号の記載がないもの)」や「公共料金の領収書のコピー」も添付してください。
提出期限は所在地変更の事実があってから5日以内です。
(出典:日本年金機構|事業主の変更や事業所に関する事項の変更(訂正)があったとき)
「健康保険・厚生年金保険事業所関係変更(訂正)届」は、事業主の連絡電話番号や氏名、その他の変更があったときに提出する書類です。
住所変更の場合は、新しくなった電話番号以外はそのまま転記するだけなので、日本年金機構の記入例を基に記載しましょう。
提出先は、事務所の所在地を管轄する年金事務所です。
窓口持参や郵送、電子申請にて提出します。法人でない限りは他に添付書類は必要ありません。
提出期限は所在地変更の事実があってから5日以内です。
フリーランス(個人事業主)として住所変更する際の国民健康保険について解説します。
フリーランス(個人事業主)として同一市区町村内で住所変更(引っ越し)する場合は、住所変更後の市区町村の役場にて住所変更手続きを行うのみです。
次のものを準備し、役場窓口で申請を行いましょう。
・国民健康保険証(家族分も含む)
・本人確認書類
・印鑑
・(代理人に任せるときは委任状+代理人自身の印鑑・本人確認書類)
印鑑登録も自動的に行われるため、新しく手続きする必要はありません。
他の手続きと一緒に済ませることをおすすめします。
手続き期限は、移転してから14日以内です。
フリーランス(個人事業主)として異なる市区町村区へ住所変更(引っ越し)する場合は、変更前・変更後それぞれの役場にて手続きが必要です。
まず変更前の住所では、国民健康保険の「資格喪失手続き」を行います。
期限は転出後14日以内です。
その後に新しい住所の役場にて、国民健康保険の加入手続きを行ってください。
期限は住所変更を行ってから14日以内です。
転出届・転入届の提出の際に、同時に行うことをおすすめします。
資格喪失手続きを行っておかないと、旧自治体で保険料が請求されてますので、フリーランス(個人事業主)は忘れずに行いましょう。
フリーランス(個人事業主)として住所変更手続きを進める際の、3つの注意点をご紹介します。
フリーランス(個人事業主)は、税務関係の書類・保険関係の書類の控えは捨てずに保管しておきましょう。
書類のなかには、提出したっきりで戻ってこないものがあるためです。
手元に控えがあれば、他の税務署や役場での手続きのときに、記載内容を参考にできます。
わざわざ電話や窓口で問い合わせる手間を省くことが可能です。
当記事で紹介した書類にはすべて、長くても1ヶ月以内の提出期限が存在します。
もし提出期限に遅れると、その後の手続に時間がかかったり、税務・住所関係の大切な書類が届かなくなったりのデメリットが発生します。
また期限ギリギリの提出の場合だと、書類の記入漏れや誤字脱字などの修正で間に合わなくなるかもしれません。遅くても2~3日前の提出が望ましいです。
フリーランス(個人事業主)として自己管理を徹底させましょう。
提出が遅延すると、クライアント(企業)との仕事に集中出来なくなる可能性もあり得ます。
万が一提出が遅れそうなときは、事前に担当窓口へ相談しましょう。
マイナンバーは非常に重要な個人情報です。
もし第三者に流出してしまった場合は、他の個人情報や金融機関情報が漏洩するリスクがあります。
とくに自分以外の従業員のマイナンバーが漏洩した場合は、事業主への訴訟に発展するかもしれません。
無限責任であるフリーランス(個人事業主)の場合、一生をかけて償うこともありえます。
書類への記載やコピーの添付などのときは、他の人に知られないように細心の注意を払ってください。
フリーランス(個人事業主)が住所変更の手続を行う方法には、窓口・郵送・e-Taxの3種類が存在します。
税務署や年金事務所、役場の窓口へ書類を提出して手続きする方法です。
その場で職員に質問したりアドバイスを受けられたりする点が、直接窓口に持っていく最大のメリットになります。
また窓口に足を運ぶ際は、添付資料のコピーではなく実物の掲示で済むケースが多いため、コピーの手間が省けるのも嬉しいポイントです。
ただし、それぞれの窓口に出向く時間や労力がかかる点がデメリットです。移動先の市区町村によっては、数時間かかるケースも考えられます。
フリーランス(個人事業主)として仕事が忙しい場合は、平日の窓口の受付時間に行くのが難しい人もいるでしょう。
税務署関係の場合は、24時間投函できる時間外収受箱の利用がおすすめです。
郵送で手続きを行う場合は、税務署や年金事務所、役場の時間を気にせずに提出できる点がメリットです。
忙しくて窓口に行けないフリーランス(個人事業主)の方は、郵送を利用しましょう。
郵送するときは、添付資料として本人確認書類のコピーが必要だったり、切手・封筒代がかかったりします。
また、宛先を間違えると正しく届かないかもしれません。
自分がどこの住所・管轄の施設に送ればよいのか、公式ホームページをしっかりチェックし、間違いがないように記載しましょう。
書留扱いで提出する方法もおすすめです。
税務署関係の書類は、e-Taxによる電子申請が可能です。あらためてe-Tax手続きが可能な書類を見ていきましょう
・所得税・消費税の異動に関する届出書
・個人事業の開業・廃業等届出書
・給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
e-Taxでの申請の場合、本人確認書類や添付が要らなくなります。
またe-Taxの利用時間内であれば、自宅でいつでも提出できる点もフリーランス(個人事業主)にとって大きなメリットです。
以下では、e-Taxの利用時間をご紹介します。
・平日(12月29~1月3日を除く):24時間
・土日祝の翌日稼働日:8:30~
・毎月の最終土曜日および翌日の日曜日:8:30~24:00
・土日含む所得税等の確定申告時期:24時間
ただし、e-Taxを利用するには事前の登録が必要です。
電子証明書を発行し、電子申告・納税等開始届出書を提出してください(オンライン提出も可能)。
また2020年度の確定申告より、65万円の青色申告特別控除を受けるにはe-Taxでの電子申請が必須になりました。
節税面でも、e-Taxに登録しておくことをおすすめします。
ちなみに、国民年金関係の書類も「電子申請・電子媒体申請」を参考にしての電子申請が可能です。
電子申請することにより、24時間申請が可能になったり、どこからでも申請可能な点がメリットです。
住所変更(引っ越し)後の確定申告は、納税地の税務署に行います。
たとえば1~11月はA市、12月に住所変更(引っ越し)したB市で事業を行っていた場合も、引越し先であるB市管轄する税務署への確定申告です。
フリーランス(個人事業主)としてたとえ引っ越す前の市区町村で年間ほとんど事業を実施していても、納税はあくまで住所変更したところになる点を覚えておきましょう。
フリーランス(個人事業主)の住所変更で必要になる書類は、主に次のとおりです。
<税務関連の手続き>
・所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書
・個人事業の開業・廃業等届出書
・給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
・預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書
<社会保険関連の手続き>
・健康保険・厚生年金保険適用事業所名称/所在地変更(訂正)届
・健康保険・厚生年金保険適用事業所関係変更(訂正)届
・国民健康保険
各提出先へ期限内に提出し、スムーズな手続きを行いましょう。
フリーランス(個人事業主)として、正しく変更が完了すれば新天地にてスッキリと事業をスタートさせられるはずです。
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