インボイス制度とは?必要な対応は?

税金

2023.01.12

軽減税率が2019年10月の消費増税と同時に導入され、現在消費税には2種類の税率があります。
そのため政府は、取引の透明性を高め、正確な会計処理がなされるよう、2023年から「インボイス制度」を導入することを決定し、2023年10月1日(日)より「インボイス制度」が導入されます。

導入後は、消費税を納める必要のある企業や個人事業主だけでなく、免税事業者も影響を受けることが予想されます。
馴染みのないシステムなので、この記事で詳しく見ていきましょう。

<目次>
1.インボイス制度とは?
インボイス制度とは?
インボイスと現在の「区分記載請求書」の違い
仕入税額控除とは?
2.インボイス制度の必要性
取引における消費税額を正確に把握するため
正しい税率を確認するため
不正やエラーを避けるため
3.インボイス制度に関する疑問
インボイス制度はいつから?
インボイス(適格請求書)は誰でも発行できる?
4.適格請求書保管方式について
5.免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置
6.インボイス制度導入の影響
経理業務への影響
税額計算方法の一部が変わる
事務が複雑になる
免税事業者への影響
7.インボイス制度への対応
課税事業者向け
免税事業者向け
8.インボイスの発行を受けなくても仕入税額控除が受けられるケース
9.まとめ

 

 

 

1.インボイス制度とは? 


インボイス制度とは関連画像
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この章ではインボイス制度の概要について説明します。

 

インボイス制度とは?

インボイス制度とは「適格請求書保存方式」のことを指します。

そして指定された記載要件を満たす請求書が「インボイス」です。インボイス制度は売り手と買い手の両方に適用されます。 

 

売り手は相手方(買い手)の要請に応じてインボイスを発行する義務があります。

買い手は、原則として相手方(売り手)発行のインボイスを保管する義務があります。

 

売り手は「適格請求書発行事業者」となる必要があります。適格請求書発行事業者のみがインボイスを発行できるからです。

適格請求書発行事業者の登録申請は2021年10月1日以降に提出できます。

 

 

インボイスと現在の「区分記載請求書」の違い

インボイスは、現行の「区分記載請求書」に記載事項が追加されています。

現行の「区分記載請求書」の記載事項は以下の通りです。

A.事業者の氏名又は名称
B.取引年月日
C.取引内容(軽減対象税率の対象品目である旨)
D.税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)
E.書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

 

インボイスは現行の「区分記載請求書」の記載事項に加え、次の3項目が追加されています。

F.登録番号(課税事業者のみ登録可)
G.適用税率
H.税率ごとに区分した消費税額等

 

 

仕入税額控除とは?

税額控除は二重課税を解消するための制度です。

特に売上高から仕入税額を控除することを「仕入税額控除」といいます。

 

例えば、売上税額が300万円で仕入税額が200万円の場合、200万円の仕入税額控除が適用されるので、この事業者が国に納める消費税額は100万円となります。

この税額控除を受けるためには、「インボイス(適格請求書)」を保管する必要があります。

 

 

 

 

2.インボイス制度の必要性


インボイス制度とは関連画像
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インボイス制度の導入が必要な主な理由は、「取引における消費税額を正確に把握するため」「正しい税率を確認するため」「不正やエラーを避けるため」などです。

それぞれを詳しく見てみましょう。

 

取引における消費税額を正確に把握するため

インボイス制度が必要な理由の一つは取引における消費税の額を正確に把握するためです。

 

例:販売店がメーカー(仕入先は課税事業者)から卸値2,000円で仕入れる場合

 

消費税10%の場合、販売店の仕入金額は2,200円となります。

これを顧客に3,000円で販売しようとすると税込3,300円になります。

 

販売店は仕入時に200円払っているので、消費税の納税額は300円から200円引いて100円です。

これは消費税が10%の場合で、軽減税率により複数の税率が混在する場合は、どの商品にどの税率が適用されるかを区別する必要があります。

 

税率が1つの場合は、売上から仕入額を差し引き、それに税率を掛けることで簡単に税額を計算できるケースもありますが、税率が複数ある場合は、それぞれの商品に適用される税率から正しい税額を計算する必要があります。

そのために、商品ごとに価格と税率を記載した書類を保管しておく必要があります。

 

 

正しい税率を確認するため

インボイス制度が必要なもう1つの理由は、正確な税率を確認するためです。

単に仕入れて売るだけでも、複数の税率が混在していると正確な税務処理が難しくなります。

 

これに加工のプロセスや異素材の組み合わせが加わると、さらに複雑になります。

例:スーパーの総菜コーナーに並ぶお弁当など複数の税率が混在している場合

 

まず、食材は軽減税率で課税されるため、税率は8%です。使い捨てのお箸やトレイの税率は10%です。

調理用のガス・水道・電気などの公共料金にも10%の税率が課されます。 さらに出来上がったお弁当には8%の税率が適用されます。

 

このように、食材の仕入れから仕込み・加工・販売までにはいくつかの工程があり、それぞれの税率が異なる場合、正確な税額をインボイスなしで確認することは非常に困難です。

また、購入時の税額と売却時の税額が異なる場合は、全体の納税額を見越した上での調整が必要かもしれません。

 

 

不正やエラーを避けるため

複数の消費税率に対応したインボイス制度の導入に伴い、経理の現場でもワークフローをある程度変える必要があります。

もちろん、これには時間・労力、そしてスタッフのトレーニングが必要です。

 

そうする上で、インボイスを使わずに複数の適用税率を分類して正確な税額を計算するのは手間がかかりますし、当然ミスも生じえます。

またインボイス制度が導入されていないと、売買の際に不正が行われる可能性があります。

 

たとえば、軽減税率の対象となる商品を購入したとします。

8%の税率を適用すべきものを10% の税率として計上した場合、2%の差額は不当な利得と言えます。

 

このような不正を防止するために、「誰が・いつ・何を・何%の税率で、合計いくらで販売したか」を記載したインボイスが必要です。

 

 

 

3.インボイス制度に関する疑問


インボイス制度とは関連画像
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この章ではインボイス制度についてよくある疑問についてお答えします。

 

インボイス制度はいつから?

インボイス制度は 2023年10月に稼働します。

これに先立ち、2021年10月より、「適格請求書発行事業者の登録申請」が開始されています。

 

制度の開始にはまだ時間がかかるように思われるかもしれません。

ただし、インボイスの取り扱いには考慮すべき要素が多く、システムの切り替えが必要になる場合も想定して、余裕を持った対応を行うことをお勧めします。

 

 

インボイス(適格請求書)は誰でも発行できる?

インボイス(適格請求書)を発行するには、所轄の税務署に申請して「適格請求書発行事業者」になる必要があります。 

 

登記申請の手続き

❶登記申請
❷税務署での確認
❸インボイス(適格請求書)に記載する登録番号をお知らせ
❹通知がなされる

 

この登録番号は国税庁のホームページに掲載されます。

2021年10月1日より登録申請を受け付けています。

 

2023年10月1日から適格請求書発行事業者となり「インボイス」を発行すると、

登録は2023年3月31日までに申請書を提出する必要があります。

 

課税事業者のみが適格請求書発行事業者になることができます。

課税事業者の方は、「適格課金事業者登録申請書の登録申請書」を提出してください。

 

一方、免税事業者がインボイス(適格請求書)を発行するためには、課税事業者になる必要があります。

 

 

 

4.適格請求書保管方式について


インボイス制度とは関連画像
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現在、消費税率は原則10%ですが、食品(飲食店等を除く)や新聞購読は8%の軽減税率が適用されます。

つまり、10%と8%の2つの税率が混在している状況です。

 

現行の「区分記載請求書等保存方式」により、軽減税率を記載する必要がありますが、インボイス制度では、各税率の税額や登録番号などの新しい項目を明記する必要があります。

これにより、売り手は買い手に適用される正確な税率と消費税額を伝えることができます。

 

インボイス制度に準拠した請求書等を適格請求書といい、当該請求書に基づいて消費税の仕入税控除額を計算し、証拠として保管する方法を「適格請求書等保管方式」といいます。

 

 

 

5.免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置


インボイス制度とは関連画像
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年間の課税売上高が1,000万円以下の事業者で消費税が免除される事業者を免税事業者といいます。

インボイス制度では、適格請求書発行事業者以外から行った課税仕入れに対して、仕入税額控除を適用することはできません。

 

これは、免税事業者がインボイスを発行できないためです。

ただし、経過措置として、インボイス制度の導入後しばらくは、現行の「区分記載請求書等」についても、一定割合の仕入税控除が認められています。

 

2023年10月1日から2026年9月30日まで: 仕入税額相当額の80%
2026年10月1日から2029年9月30日まで: 仕入税額相当額の50%

 

 

 

6.インボイス制度導入の影響


インボイス制度とは関連画像
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この章ではインボイス制度導入の影響について説明します。

 

経理業務への影響

インボイスは、現在の「区分記載請求書」に次の3つの要素が追加されます。

 

(1)登録番号(課税事業者のみ登録可能)
(2)適用税率
(3)税率別の消費税額

 

これらの所定要件を満たすように、請求書・帳簿などをフォーマットにして準備してください。

 

 

税額計算方法の一部が変わる

インボイス制の開始に伴い、税額計算方法が一部変更となります。

 

売上税額

現行の税額計算方法(割戻し計算)は継続します。
消費税額の合計額に78/100を掛けて計算した金額を売上税額とできます(積上げ計算の特例)
但し、消費税額を積上げ計算にする場合は、仕入税額も積上げ計算にする必要があります。

 

仕入税額

現行の税額計算方式(積上げ方式)を継続します。
適用税率8%・10%ごとの購入総額に8/108または10/110を乗じて課税標準額を算出し、それぞれの税率(6.24%または7.8)を乗じて仕入れ税額を算出(割戻し計算の特例)
ただし、仕入税額を割戻し計算にした場合は、売上税額も割戻し計算する必要があります。

 

 

事務が複雑になる

インボイスは課税事業者である適格請求書発行事業者のみが発行できます。 

インボイスが発行できない免税事業者がいた場合、免税事業者と課税事業者を分けて経理処理する必要があります。

 

 

免税事業者への影響

インボイスを発行できないフリーランスや個人事業主はどうなるか考えてみましょう。

インボイス制度導入の最大の問題点は、インボイスを発行できない事業者からの仕入に対しては「仕入税額額控除」が認められないことです。

 

以前は、請求書がなくても帳簿に支払先の名前と請求書がない理由を記入することで仕入税額控除を受けることができました。

しかし、インボイス制度の導入により、「適格請求書」の受領が仕入税額控除の要件となり、規制が厳しくなります。

 

その結果、材料の仕入先から経費の支払先まで「適格請求書」を発行できる事業者でない限り、今後の取引について話し合う必要があるかもしれません.

ここまでは「仕入れる側」の立場でした。

 

では、「売る側」から見たインボイス制度の問題点は何でしょうか?

免税事業者が最も影響を受けます。年間課税売上高が1,000万円以下のフリーランス・個人事業主は、多くの場合、免除事業者です。

 

インボイスを発行できるのは「適格請求書発行事業者(※適格請求書発行事業者になるには課税事業者である必要がある)」のみです。

免税事業者は「適格請求書」を発行することはできません。

 

そのため取引相手は、「仕入税額控除」を目的として、取引を別の課税事業者に切り替えたり、取引条件の変更を提案したりする可能性があります。

ただし、取引条件が変更された場合、取引への交渉力が売上先の企業より小さいケースが多いため、新しい取引条件がより不利になる可能性があります。 

 

取引条件が見直される場合、内容によっては販売先が独占禁止法・下請法・建設業法等で問題となる可能性があります。

そのため、課税事業者となることを検討する必要があるかもしれません。

 

これまで受け取った消費税分得をしてきた免税事業者が適格請求書発行事業者になれば納税義務が生じることになります。

 

 

 

7.インボイス制度への対応


インボイス制度とは関連画像
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課税事業者向け

 

・適格請求書発行事業者として登録されているか確認する

これは購入者として必要な準備です。 取引先からインボイスの発行を受けないと、消費税の仕入額控除が受けられないためです。

もし取引先が免税事業者の場合、適格請求書発行事業者になる予定があるかどうかを確認した方が良いでしょう。

 

継続的に取引を行う取引先で免税事業者がいる場合は、課税事業者とは別に管理する必要があるケースも想定されます。

 

・レジ照合請求書の導入

現在の「区分記載請求書」はインボイス制度に対応できません。

インボイスに対応したレジへの交換などが必要です。

 

インボイスに対応するレジへ交換すると、相応のコストが発生することにご注意ください。

 

・インボイスの受発注システム、請求書管理システムの導入

現在お使いの受発注システムや請求書管理システムがインボイスに対応していない可能性があります。

この場合、システムの改修などを実施する必要があります。

 

システムの改修などには費用がかかります。

クラウドサービスを利用してコストを削減できると言われていますので、ご検討ください。

 

・現在使用している請求書などの適格請求書への変更

インボイス制度に対応するためには、現在使用している請求書・領収書を対応する適格請求書の内容に変更する必要があります。

適格請求書の要件に適用できるようにフォーマットを変更してください。 ただし、変更する際に注意点があります。

 

まず注意する必要があるのは端数処理です。

適格請求書は税率ごとの合計金額に対して1回だけ四捨五入されるという規則の対象となり、商品ごとに端数処理をした上での四捨五入は禁止されています。

 

また、端数処理で「四捨五入、切り上げまたは切り捨て」を任意で選択できますが、これはフォーマットで統一する必要があります。

他にも、「仕入明細書等で取り扱う場合」「複数の書類にて取り扱う場合」「電磁的記録(電子インボイス)を利用する場合」などのルールも書かれているので、詳しく確認しておきましょう。

 

・適格請求書とそれ以外の書類を分けて保管

インボイスシステムでは適格請求書のみが仕入税額控除の対象となるため、適格請求書とその他の書類は別々に管理する必要があります。

明確に区別することで、税額を計算する際の混乱を避けることができます。

 

システムで管理する場合でも、システムの現状を把握し、インボイスへの対応を明確にすることが重要です。

 

 

免税事業者向け

免税事業者が適格請求書発行事業者として登録されるためには、事前に消費課税事業者選択届出書を提出し、課税事業者となる必要があります。

ただし、経過措置があります。インボイス制度が始まる2023年に登録すれば、登録日から課税事業者になれます。

 

また、2023年3月31日より前に登録申請書を提出できない困難な状況がある場合は、2023年9月30日までに登録申請書を提出し、状況を明記して税務署長から適格請求書発行事業者の登録を受けたときは、2023年10月1日に登録されたものとみなされます。

 

 

 

 

8.インボイスの発行を受けなくても仕入税額控除が受けられるケース


インボイス制度とは関連画像
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インボイス制度が導入されると、購入者は関連するインボイスを保管する必要があります。

ただし、下記のようにインボイスを受け取れないケースもあります。

 

自動販売機での飲み物の購入

郵送サービスのポストでの利用

3万円未満の公共交通機関を利用した乗車券

入退場で回収される入場券

従業員が支払いを受ける日当・生活費

適格請求書発行事業者でないものから購入した再生資源

 

このような場合、適格請求書発行事業者の義務は免除されます。

一定の要件を満たす帳簿を所有している場合には、仕入税額控除を受ける資格があります。

 

 

 

9.まとめ


2023年10月1日(日)にインボイス制度が始まります。

それまでに準備が必要だとわかっていても、先延ばしにしている方も多いのではないでしょうか。

 

適格請求書発行事業者の登録や請求形式の変更など、基本的に申請・実施にはある程度時間がかかります。

また、切り替えを実施する従業員を訓練する必要がありますので、それ以上に時間がかかるケースもあります。

 

したがって、できるだけ早く準備する必要があります。

まず、インボイス制度を正しく理解し、満たすべき要件を理解することが重要です。

 

たとえば、請求書に誤りがあるとインボイス制度とは見なされず、仕入税額控除の対象にはなりません。

納入先に迷惑をかける可能性があるため、インボイス制度をよく理解し事前に準備しておくことが大切です。

 

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