公開日:2022.12.14
更新日:2025.03.24
消費税は日本人にとって最も有名な税金の一つと言えるでしょう。
しかし、消費者として支払う消費税についてはよく知っていても、事業者として消費税を徴収・納付することとなると分からないことがたくさんあるかもしれません。
消費税の徴収・納付の仕組みは非常に複雑であり、納税者になることに不安がある人も少なくないでしょう。
消費税の納付は事業を始めてある程度の規模になったときに考慮しなければならない事項です。 課税事業者になると赤字でも消費税を支払わなければならないケースもあります。
納税義務があるかどうかは個人事業主・法人ともに課税売上高と呼ばれる金額に基づいて判定されます。
そして納税義務者と判定されれば、消費税を納める必要があります。思っていた以上の金額になってしまったという方もいらっしゃることでしょう。
そもそも課税売上高の計算方法は複雑であると感じていて、どうなったら課税事業者になるのかわからないという方も少なくないのではないでしょうか。
そこで今回は課税売上高について詳しく解説し、消費税の概要についても触れます。
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<目次>
1.課税売上高とは?
消費税がかからない取引(非課税取引・不課税取引)の例
2.課税売上高の計算方法
3.消費税の概要
4.消費税の計算方法
5.課税事業者となる条件は?
6.基準期間と特定期間について
基準期間
特定期間
7.課税売上高を用いて行う計算・判定
納税義務
仕入税額控除
簡易課税制度
8.消費税の申告・納付方法
申告方法
納付方法
9.課税事業者が提出すべき書類
10.まとめ
課税売上高とは消費税の課税対象となる取引についての売上(課税売上)の金額のことです。
ほとんどの取引に関連する売上は課税売上となります。
本業の売上はもちろん、事務所となっている建物の売却など、本業としての売上ではなくとも事業活動に関連する多くの収入が課税売上高に含まれます。
原稿料・講演料・印税・オンライン事業での副業の収入も課税売上高となります。
1.不課税取引の例
・国外取引
・寄附や単なる贈与
・出資に対する配当
2.非課税取引の主な例
・土地の譲渡・貸与等
・住宅の貸付け
・有価証券等の譲渡
・利息・保険料等
・商品券等の譲渡
・戸籍謄本等についての事務手数料
・社会保険等
・介護保険サービス等
・出産費用等
・埋葬料等
・一定の学費等
なお不課税取引とは「国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等」ではなく、かつ、「輸入取引」でもないものです。
非課税取引は「国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等」又は「輸入取引」ではあるものの、課税対象としてはなじまないものや社会政策から消費税を課税しない取引のことです。
課税売上高は非課税取引・不課税取引にあてはまらない多くの課税取引に関する収入を合計して計算します。
算出式は以下です。
課税売上高=全ての売上高合計-免税取引・不課税取引・非課税取引に関する売上高
消費税は商品の販売・役務の提供などの取引に対して、広く公平に課せられる税金です。
事業者に負担を求めるのではなく、流通の各段階で税を順次徴収するものの、最終的には消費者が全額を負担します。
実際の納税は生産・流通・小売の段階で事業者によって行われます。
課税対象の物品が生産・流通・小売りの段階を経る場合、取引の各段階で消費税が課税されるため、そのままでは二重課税または三重課税が発生します。
しかし、実際には納税義務者は「預かった消費税額-支払った消費税額」を納付することで二重課税または三重課税が回避されています。
消費税の納付額は、原則として、課税売上高に関する消費税額から課税仕入れについての消費税額を差し引いた金額となります。
課税仕入れとは、商品などの仕入れ・機械や建物等の事業用資産の購入または賃借・原材料や事務用品や運送等のサービスの購入・そのほか事業のための購入などのことをいいます。
ただし、土地の購入や賃借などの非課税取引・課税対象とならない給与・賃金などは課税仕入れに含まれません
つまり納付すべき消費税額は、課税売上高に関する消費税額を算出し、仕入先に支払った消費税額を差し引いて計算できる、ということです。
数値例を挙げます。
消費税が10%ですので、仕入先から消費税抜きで10万円の商品を購入した場合、消費税:1万円を加えて11万円を仕入先に支払います。
次に消費税込:11万円で購入した商品を消費税抜き:15万円で販売したとすると、消費税1万5000円を合わせて、16万5千円を売り先に請求します。
この場合納付すべき消費税額は、課税売上高に関する消費税額:15,000円から課税仕入れについての消費税額:10,000円を差し引いた5,000円となります。
ただし消費税を支払っても課税仕入れ等の事実を記載した帳簿と請求書等の両方の保存がないと、課税仕入れ等の消費税は控除できないので注意する必要があります。
課税期間(個人事業主の場合は暦年・法人の場合は事業年度)において、基準期間または特定期間における課税売上高が1,000万円超の場合には消費税の納税義務があります。
この際に用いられる課税売上高は消費税抜きの金額です。
通常、消費税を抜いた金額を計算して求める必要があります。
つまり、基準期間または特定期間における課税売上高(税抜き)が1,000万円を超えると、課税事業者になるということです。
課税事業者でない場合には消費税についての事務を行う必要がないというメリットがある反面、仕入れに対する消費税の控除は認められていないため、消費税の還付を受けられないというデメリットもあります。
消費税の還付を受けている輸出業者などの事業者が消費税の還付を受けるためには、課税事業者になる必要があり特に基準期間または特定期間における課税売上高が1,000万円以下の場合には注意が必要です。
また、大規模な設備投資等を予定している場合は、購入時の消費税が高くなるため、課税売上高(税抜き)が1,000万円以下でも、課税事業者になる方が有利な場合があります。
基準期間または特定期間における課税売上高が1,000万円以下でも課税事業者となることは可能です。
任意で課税事業者となるには、課税期間開始日の前日までに、納税地を管轄する税務署に「消費税課税事業者選択届出書」を提出する必要があります。
基準期間とは、個人事業主を例にして簡単に言うと、2年前の期間のことです。
例えば、2022年の課税売上高が1,000万円を超えると、2年後の2024年に課税事業者となります。
2023年に課税売上高が1,000万円以下になっても、2024年には消費税がかかりますので、資金計画を立てる必要があります。
仮に課税売上高が1,000万円を超えている個人事業主が課税事業者でない期間を延長したい場合は、法人化するという手段が存在します。
個人と法人は別の事業体であるため、個人が法人を設立し法人の代表者となり、同一の業務を行う場合でも消費税の納税義務は個人と法人で別々に決定されるからです。
個人での課税事業者でない期間の終了に合わせて法人化した場合であれば、まず課税事業者ではないところから法人がスタートすることになります。
しかし、消費税だけを考えて法人化を実施するのは良くないと言えるでしょう。
法人化する場合、経理・税務は自分でできるほど簡単ではないのが通常なので税理士に任せるケースが多く、税理士に報酬を支払わなければならないからです。
また赤字であっても納めなければならないような別の税金が発生する可能性もあります。
さらに法人には従業員の社会保険について半分の負担義務があります。
法人化を実施するべきかどうかはメリットとデメリットを一つ一つピックアップして総合的に判断してください。
特定期間とは個人事業主の場合は前年の1月1日から6月30日までです。
例えば、個人事業主の場合、前年の1月1日から6月30日までの課税売上高が1,000万円を超えると、翌年に課税事業者となります。
なおこの判断は課税売上高ではなく、賃金等の支払い総額で行うことも可能です。
なお個人事業の開業が7月1日から12月31日の場合は、この期間は適用されません。
前章で課税売上高は消費税の納税義務者を決定するために使用されることを説明しました。
基準期間又は特定期間の課税売上高が1,000万円を超える事業者は課税事業者となります。
課税売上高は消費税の納税義務が発生するかどうかを判断するための基準として使用されます。
課税事業者でない事業者の消費税を誤納を防ぐためにも、課税売上高という概念は重要です。
仕入れに対して売上が少ない場合、一度納めた消費税が還付されるケースがあります。
具体的には、売上時に預かった消費税額よりも仕入れ時に支払った消費税額が多い場合には超過分が還付されます。
とくに輸出業では国内で仕入れた商品を海外の取引先に販売する際に消費税を受け取ることができませんので、課税売上高を計算することでどのくらい納税額が還付が受けられる見込みかを把握できます。そして最終的に超過分が戻ってきます。
簡易課税制度とは納付すべき消費税額の計算が簡素化できる制度です。
預かった消費税額から、実際の課税仕入れ等に含まれている消費税額ではなく、課税売上高に一定の「みなし仕入率」を乗じた金額を控除して納付税額とできる制度です。
個人事業主や小規模事業者の場合、消費税の計算が実務上過大な負担になることがあります。
そこで、簡易課税制度という簡易な計算方法を利用することで、消費税の計算負担を軽減できます。
ただし、簡易課税制度を利用するには、「基準期間の課税売上高が5,000万円以下」で、かつ、「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。
このように、簡易課税制度の適用可否を判断するため、課税売上高を利用する必要があります。
なお簡易課税制度は、適用後2年間継続する必要があります。
大規模な設備投資等を行う場合、実際の購入にかかる消費税額がみなし仕入率で計算した消費税額よりも多くなる場合があり、原則課税が有利になるケースがあります。
そのため、大規模な設備投資を計画している場合には、簡易課税制度の適用を決定する前にどちらが有利かを慎重に検討した方が良いでしょう。
簡易課税制度を適用するときの事業区分およびみなし仕入率は、次のとおりです。
事業区分 |
みなし仕入率 |
---|---|
第1種事業(卸売業) |
90% |
第2種事業(小売業、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業に限る)) |
80% |
第3種事業(農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く)、鉱業、建設業、製造業、電気業、ガス業、熱供給業および水道業) |
70% |
第4種事業(第1種事業、第2種事業、第3種事業、第5種事業および第6種事業以外の事業) |
60% |
第5種事業(運輸通信業、金融業および保険業、サービス業(飲食店業に該当するものを除く)) |
50% |
第6種事業(不動産業) |
40% |
(引用:No.6505 簡易課税制度)
申告書を税務署に持参し提出するか、申告書を郵便等で居住地等の税務署に送付するという方法があります。
1.振替納税
振替納税の申請書は、翌年の3月15日までに提出する必要があります。用紙に必要事項をご記入の上、管轄の税務署または金融機関に送る必要があります。
2.e-Tax
自宅からインターネットを利用して支払いが可能です。
3.クレジットカード
インターネットの専用画面から支払いが可能です。
4.QRコード
自宅等でインターネットの確定申告等作成コーナーのコンビニ決済QRコード作成画面からお支払いに必要な情報をQRコードで作成(印刷)し、コンビニで店頭で支払いが可能です。
5.金融機関・税務署での払い
管轄の金融機関や税務署の窓口にて、現金でお支払いいただく方法です。
1.基準期間の課税売上高が1,000万円を超える場合
基準期間の課税売上高が1,000万円を超える場合は、「消費課税事業者届出書(基準期間用)」を提出する必要があります。
2.特定期間の課税売上高等が1,000万円を超える場合
特定期間の課税売上高等が1,000万円を超える場合は、「消費課税事業者届出書(特定期間用)」をする必要があります。
消費課税事業者届出書(特定期間用)を提出することで、翌年から消費税課税事業者となります。
消費税の税額を算出する前に、課税売上高を基準として納税義務を判定することを説明しました。
税理士に全ての手続きを任せるのであれば、これらについて詳しく知る必要はないかもしれませんが納税義務の定義や簡易課税適用の可否はキャッシュフローに大きな影響を与えるので、自分で知っておく価値はあると思います。
消費税について検討する場合は、課税売上高という用語がよく出てきますので、この機会にしっかりと理解しておいてください。
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