公開日:2020.11.27
更新日:2025.03.24
「フリーランスの事業を法人化するために、資金を調達したい」
「フリーランスとして独立するけど、どの程度稼げるか不安」
上記のようなフリーランス(個人事業主)に必要となるのが「事業計画書」です。
この記事では、フリーランス(個人事業主)が事業計画書を作成するメリットや、事業計画書作成のノウハウについて詳しく解説します。
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<目次>
1.フリーランス(個人事業主)として事業計画書を知ろう!
事業計画書
2.フリーランス(個人事業主)でも事業計画書は作成すべき?
フリーランス(個人事業主)で事業計画書を作成した方が売上は伸びる
3.フリーランス(個人事業主)が事業計画書を作成しない理由
4.フリーランス(個人事業主)が事業計画書を作成するメリット
事業の全体像が明確になり客観的に把握できる
フリーランス(個人事業主)としてのゴール(目標)地点を熟考する機会が出来る
フリーランス(個人事業主)としての事業を計画的に運用できる
5.フリーランス(個人事業主)として事業計画書の内容を知ろう!
会社の概要
ビジネスプランの説明
市場分析
設備資金と運転資金の内訳
収支計画
資金繰り表
6.フリーランス(個人事業主)として事業計画書を作成してみよう!
7.まとめ
まずは、フリーランス(個人事業主)として事業計画書の概要と作成する目的について理解しましょう。
事業計画書とは、事業の目標を明確化し、目標の実現に向けて必要な手段や戦略などを記した計画書です。
1年~数年単位での事業方針を、数値を交えて具体的に表します。
事業計画書を作成する目的は、主に以下の通りです。
1.銀行から融資を受けるため
2.顧客や仕入先などに自分の事業を説明するため
つまり、協力者からの信頼を得るための資料として、事業計画書を作成するのです。
フリーランス(個人事業主)の場合、融資や仕入先を必要としない人も多いでしょう。
しかし、事業計画書を作成するもう1つの重要な目的として「自分の事業の経営状況を把握し、管理すること」が挙げられます。
次の章で詳しく解説していきます。
「フリーランス(個人事業主)として働く分には融資は必要ないし、事業計画書は必要ないのでは?」と考えた方がいるかもしれません。
結論から言えば、フリーランス(個人事業主)こそ事業計画書を作成すべきです。
なぜなら、事業計画書を作成することで、売上が伸びる可能性があるからです。
中小企業庁が発行した2016年版小規模企業白書において、事業計画書の作成と売上高の相関について調査を行った報告があります。
事業計画書作成と売上高の相関関係は、以下の通りです。
売上増加 | 横ばい | 売上減少 | |
事業計画書を作成したことがある | 34.0% | 42.3% | 23.7% |
事業計画書を作成したことがない | 20.2% | 46.6% | 33.2% |
※データ引用元:2016年版小規模事業白書「第1-2-39図 経営計画の作成の有無と売上高の傾向」
まず、売上の増加傾向についての比較です。
「事業計画書を作成したことがある」人のうち、全体の34.0%が「売上は増加傾向にある」と回答しています。
これは、「事業計画書を作成したことがない」人の20.2%と比較して、13.8%も多いことがわかります。
一方、売上の減少傾向については、逆の傾向が確認できます。
「事業計画書を作成したことがある」人のうち、全体の23.7%が「売上は減少傾向にある」と回答しており、「事業計画書を作成したことがない」人の33.2%と比較して、9.5%も少ないのです。
また、上記調査において「事業計画書を作成したことがある」と回答した人のうち、実に7割が「経営方針と目標が明確になった」、「事業の強み・弱みを認識できた」などの効果を実感しています。
以上のことから、事業計画書の作成は、フリーランス(個人事業主)の売上拡大に効果的であるといえます。
では、フリーランス(個人事業主)として働く人のうち、何割が実際に事業計画書を作成しているのでしょうか。
同じく2016年版小規模企業白書によれば、事業計画書を作成したことのあるフリーランス(個人事業主)は、全体の43.9%にとどまっていることがわかります。
事業計画書を作成したことが… | ある | ない |
フリーランス(個人事業主) | 43.9% | 56.1% |
法人 | 64.0% | 36.0% |
※データ引用元:2016年版小規模事業白書「第1-2-34図 経営計画の作成の有無(個人事業者、法人別)」
法人の場合、全体の64.0%が「事業計画書を作成したことがある」と回答しています。
事業計画書を作成したことがあるフリーランス(個人事業主)の割合は、法人と比較して少ないことが分かります。
事業計画書を作成しない理由については、以下のような回答が目立ちました。
・現状維持ができれば良いため(41.9%)
・計画など大仰なものは不要なため(37.2%)
・経営内容を熟知していれば不要なため(37.0%)
・時間的な余裕がないため(33.4%)
※データ引用元:2016年版小規模事業白書「第1-2-41図 経営計画を作成したいと思わない理由(複数回答)」
上記の結果から、事業計画書を重要視していないフリーランス(個人事業主)は、まだまだ多いのが現状といえます。
また、近年フリーランス(個人事業主)として独立出来る環境が整っていたり、フリーランスが気軽に求人・案件を受注出来るサービスが増加しています。
法人化を検討しているフリーランス(個人事業主)以外のフリーランス(個人事業主)はライフワークバランスを重要視していたり、会社に固執せず自由に働きたいなど、といった理由により独立をしている傾向が強いです。
つまり、フリーランス(個人事業主)になった目的が以前と比較し、徐々に変化していることも事業計画書を作成しない理由としてあげられるのではないでしょうか。
事業計画書の作成がフリーランス(個人事業主)の売上に影響する理由や、売上以外に得られるその他のメリットについて、それぞれの項目別に解説します。
フリーランス(個人事業主)として事業計画書の作成により得られるメリットとして、事業の全体像の把握が挙げられます。
フリーランス(個人事業主)は、誰もが漠然としたビジネスプランを描いていると思います。
ただし、頭の中で組み立てた計画には、多かれ少なかれ必ず主観が伴います。
例えば、以下のような項目について、自分のビジネスの現状を客観的に把握できているか確認してみましょう。
・顧客別の売上高・利益率比較
・年間売上目標と達成率
・数年単位の売上目標と方向性
・売上金額と案件獲得数の前年度比
・フリーランス(個人事業主)としての得意分野
・顧客別のメリットとデメリット
上記のような分析を行うことで「重要顧客の取引額が去年より減っているから、新規顧客を獲得したほうがいいかも」「全体の売上は上がっているけど、一社に依存しすぎているな」「フリーランス(個人事業主)としての本来の目的は」などの気づきが得られます。
フリーランス(個人事業主)として、自分のビジネスの現状を客観的に把握できる点が、事業計画書を作成するメリットの1つです。
事業計画書のメリットは、事業の客観的な把握だけではありません。
フリーランス(個人事業主)としてのゴール(目標)地点を熟考する、つまり将来のビジネスビジョンを考える上でも、事業計画書は重要な役割を果たします。
例えば、1年後にフリーランス(個人事業主)として達成したいゴール(目標)を考えることで、現在取り組むべき仕事の優先度が見えてきます。
・抱えている仕事の一部を外注化して、作業効率を上げたい
・法人化して事業規模を拡大したい
フリーランスとして上記のようなゴール(目標)地点に向けた事業計画書を作成することで、「目標達成のために必要な仕事」や「必要な自己投資」など、現在の自分が取り組むべき仕事を明確にすることが可能です。
働かなけば収入が途絶えるフリーランス(個人事業主)にとって、事業の継続と計画的な運用は重要な課題です。
フリーランス(個人事業主)は一人で働くことが多いため、仕事の期限や売上目標を管理してくれる上司の役割も、自らで担う必要があるのです。
作成した事業計画書に従って働くことで、仕事の進捗を管理し、計画にコミットするための意識が生まれます。
経営者と従業員の役割を両方こなす必要があるフリーランス(個人事業主)にこそ、事業の計画的運用のために事業計画書が必要といえます。
フリーランス(個人事業主)として法人化について詳しく理解したい方は下記記事をご一読ください↓
フリーランス(個人事業主)として事業計画書を作成する場合、どのような内容を盛り込めばよいのでしょうか。
事業計画書には特に定められた書式はありませんが、盛り込むべき項目はある程度決まっています。
フリーランス(個人事業主)の方に向けた内容になっていますので、早速項目別に見ていきましょう。
まずは会社概要です。
法人化していないフリーランス(個人事業主)の場合、以下の項目について記載しましょう。
・屋号・代表者名(屋号がなければ代表者名のみ)
・開業年月日
・事務所の所在地
・代表者の経歴
・フリーランス(個人事業主)としての実績
・事業概要
・ポートフォリオを含むWebサイト情報
・電話番号・Eメールアドレス
・主な取引先
「融資を受ける」「協力者を募る」などの理由がなければ、上記情報は必須ではありません。
しかし、フリーランス(個人事業主)として将来的に法人化する可能性を考えれば、他人に見せる前提で事業計画書を作成したほうが良いでしょう。
フリーランス(個人事業主)のビジネスプランを具体化するには「6W2H」の考え方が有効です。
Why(なぜやるか) |
フリーランス(個人事業主)として「何故その事業に取り組むか」というビジネスプランの大元。 将来的に目指すべきビジョンや、自分の事業における社会的存在意義などが当てはまります。 |
What(何を売るか) |
フリーランス(個人事業主)として、顧客に提供するプロダクトやサービスが当てはまります。 |
Where/Whom(誰に売るか) |
Whereは業界、Whomはターゲット顧客を表します。 営業活動を行う上で、ターゲットは絞り込んだ方がよいとされています。 |
How to (どのように売るか) |
「直接企業へ営業する」「フリーランスエージェントやクラウドソーシングの利用」など、時間・費用対効果を考えて選択します。 |
When(いつ行うか) |
「法人化」「業務の外注化」「雇用」「新規業務の開始」など、業務変革のタイミングや、目標達成までの期限などを設定します。 |
Who(誰が) |
請け負った案件を誰が担当するかを設定します。 事業規模が大きくなれば、一部業務のアウトソーシング化や従業員を雇用する選択肢も必要です。 |
How Much(いくらで) |
売上目標を達成するためには、案件あたりの単価設定をいくらにすればいいか考えます。 フリーランス(個人事業主)の場合、取引条件の設定も重要です。 |
フリーランス(個人事業主)として「6W2H」の考え方に基づいたビジネスプランを作っておくことで、事業がうまくいかない場合や、事業方針に迷った場合に、課題を見える化しやすいメリットがあります。
フリーランス(個人事業主)が特に意識するべき市場分析は、自分の市場価値を知ることです。
フリーランス(個人事業主)の市場価値は、同じ業務を請け負っていたとしても一定ではありません。
・過去の実績
・過去の経歴
・クライアントの予算
・市場動向
上記のような条件によってフリーランス(個人事業主)の市場価値が変動することを認識し、自分の市場価値が最も高くなる状況や環境を把握することが重要です。
また、業界のトレンドによる需要と供給のバランスも、フリーランス(個人事業主)の市場価値に影響します。
例えば、近年のAI(人工知能)技術の発展に伴い、機械学習の分野で頻繁に利用される言語「Python」の需要が高まっています。
Pythonの需要に対しエンジニアの数は不足傾向にあるため、2020年時点において、Pythonエンジニアの市場価値は高い状況です。
定期的な市場分析によって、フリーランス(個人事業主)としての市場価値を高める戦略を練っていきましょう。
設備資金と運転資金についても、それぞれ内訳を記載しましょう。
設備資金とは、資産性のある設備を購入する資金です。
例えばフリーランスエンジニアの場合、パソコン、仕事机、電話、場合によっては自動車などが該当します。
一方運転資金とは、事務所費、人件費、外注費、商品の仕入代金や各種経費など、事業を運転する上で必要な費用です。
フリーランス(個人事業主)として事業計画書を作成する場合、一般的な企業と同様、設備資金と運転資金を別々に計上する必要があります。
設備資金は貸借対照表(B/S)、運転資金は損益計算書(P/L)に計上されます。
なお、フリーランス(個人事業主)が特に気を付けるべきなのは、運転資金に対する考え方です。
自宅で仕事をするフリーランス(個人事業主)は、生活費と運転資金のどちらにも当てはまる費用が発生します。家賃や水道光熱費などです。
一部を運転資金として計上するのは問題ありませんが、自由に按分してよいわけではありません。
例えば家賃の場合、仕事場として利用するスペースが、家全体の何割を占めるかで運転資金としての計上額を決定します。
一般的には、4~5割程度が許容範囲といえるでしょう。
生活費を過剰に運転資金として計上するのは、税法上問題となるだけではなく、出資者や協力者に不信感を与えかねません。
運転資金の計上は、出来る限り正確に行うことをおすすめします。
フリーランス(個人事業主)として経費について詳しく理解したい方は下記記事をご一読ください↓
収支計画とは、フリーランス(個人事業主)が展開する事業について、将来的な収支を見積もることをいいます。
1年単位で計算したものを、数年分記載するのが一般的です。
これから法人化を検討するフリーランス(個人事業主)であれば、特に重要なポイントといえます。なお、必要な項目は以下の通りです。
・売上高
・売上原価(仕入高)
・経費
・利益
・借入金返済額(特になければゼロ)
・資金繰り表(次の章で解説します)
なお、収支計画書と類似の書類に損益計算書があり、こちらは過去の収支や実績を確認するための書類です。
決算期前後になったら損益計算書も併せて作成し、収支計画と比較して自分のフリーランス(個人事業主)事業を評価してみると良いでしょう。
資金繰り表とは、フリーランス(個人事業主)の事業における入出金を管理・予測する(お金の流れを示す)ために必要な表です。
フリーランス(個人事業主)には、会社員の給与のような定期的な収入が保証されていません。
その上、報酬を受け取るタイミングは、顧客によって異なります。
検収の都合などで入金の遅れが発生すれば、資金がショートする可能性があります。
そのような状況を防ぐため、事業資金の現金残高や、検収から入金までのタイミングの管理が必要になってくるのです。
なお、資金繰り表に必要な項目は以下の通りです。
・前月繰越
・収入
・財務収入(金融機関からの借入金など)
・支出(固定費や運転資金)
・財務支出(ローンの返済など)
上記の各金額を、計算式に当てはめた金額が当月残高となります。
「前月繰越」+「収入」+「財務収入」-「支出」-「財務支出」=当月残高
なお、当月残高は翌月に繰越しとなります。
事業計画書の作成方法について、概要はご理解いただけたと思います。
全ての要素を盛り込んだ事業計画書の作成は難しいかもしれませんが、冒頭で触れたとおり、事業計画書作成の目的はフリーランス(個人事業主)としての事業の概要を把握することです。
まずは出来そうな部分から、優先的に作成してみると良いでしょう。
なお、本格的に法人化を検討しているフリーランス(個人事業主)は、商工会議所の利用をおすすめします。
各自治体の商工会議所ホームページから事業計画書の書式をダウンロード出来る他、不定期で事業計画書作成のセミナーが開催されています。
また、民間で事業計画書作成を代行してくれるサービスも存在します。
フリーランス(個人事業主)としてしっかりとした事業計画書を作成したい方は、利用を検討してみてください。
フリーランス(個人事業主)が事業計画書を作るためのノウハウ、作成のコツや注意点について解説しました。
フリーランス(個人事業主)も事業計画書を作成することで、売上の増大が見込めたり、事業の強みや弱点を見える化できたりと、様々なメリットがあります。
この機会に事業計画書を作成し、ご自身のフリーランス(個人事業主)としての事業を見直してみてはいかがでしょうか。
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