2022.04.13
フリーランス(個人事業主)になるなり住民税の請求書が届き、「想定外の出費に焦った」という苦い経験をした方も多いのではないでしょうか。
会社員であれば、毎月の給与から住民税が天引きされるため「全く気にも留めていない」のが、良くも悪くも自然です。しかしフリーランス(個人事業主)になると、他人事ではありません。
本記事では住民税の概要をはじめ、計算方法や支払月、ふるさと納税との関連性についても詳しく解説しています。
ぜひ最後までお読みいただき、住民税を理解するきっかけにしていただければと思います。
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<目次>
1.フリーランス(個人事業主)として住民税を知ろう
そもそも住民税とは?
住民税は2つの税金で構成されている
所得が0でも住民税はかかる?
2.フリーランス(個人事業主)の住民税の期限はいつ?
3.フリーランス(個人事業主)の住民税の計算方法
所得割
均等割
4.フリーランス(個人事業主)がふるさと納税すると住民税は控除される仕組みとは?
住民税の控除額
住民税控除額の計算方法
5.フリーランス(個人事業主)の住民税の支払い方法
6.フリーランス(個人事業主)は住民税を経費にできる?
7.まとめ
フリーランス(個人事業主)として住民税を理解していきましょう。
住民税とは国が定める税金のひとつで、かつフリーランス(個人事業主)が支払わなければならない税金の一つです。
自分が住んでいる「都道府県」と「市区町村」に対して支払うものです。
住民税は以下の2つの税金から構成されています。
・自らの所得に対して支払う「所得割」
・その土地に住むことでかかる「均等割」
「所得割」は前年の1月1日から12月31日までの自らの所得に対して支払う税金なので一人ひとり異なるうえフリーランス(個人事業主)として高所得であればあるほど、支払う金額は大きくなります。
一方、「均等割」はその土地に住んでいることに対して支払う税金なので、住む場所さえ一緒であればどんな人でもかかる金額は一定です。
土地によって金額が変わってきますが、都道府県民税(約3,500円)+市区町村税(約1,500円)でおよそ5,000~6,000円程度が一般的で、どの自治体も大きな差はありません。
平成26年(2014年)まではおよそ4000~5,000円でしたが、復興財源確保のため平成26年(2014年)度から令和5年(2023年)度分まで、標準税率が年1,000円(市町村民税500円と都道府県民税500円)引き上げられています。
所得が0でも、住民税がかかるケースがあります。
「前年に会社員として働いていた場合」などが該当します。
住民税の金額は、前年の収入をもとに計算されるからです。
そのため「昨年も今年も年収が0円」という方は、住民税を支払う義務はありません。
また、以下に該当する方も、住民税を支払う義務はありません。
・生活保護を受けている方
・障害者、未成年者、寡婦もしくは寡夫、かつ前年の所得が135万円(改正前:125万円)以下の方
・前年の合計所得額が、各自治体の定める金額以下の方(自治体ごとに金額は異なる)
ただ、所得が0円でも、住民税の均等割だけは支払わなければならないケースもあります。
自治体ごとに非課税になる条件や金額も異なるため、自治体に相談したり、自分で調べてみたりしましょう。
フリーランス(個人事業主)の住民税の期限について解説します。
フリーランス(個人事業主)の方には、普通徴収と呼ばれる納付方法であり毎年5~6月頃、郵送で「納税通知書」が届きます。
その納税通知書が届いたら、
・年1回払いで払うか
・年4回に分割して支払うか
のどちらかを選択し、自分で支払う必要があります。
会社員の方であれば、住民税は毎月の給与から一定額が自動的に差し引かれます。しかしフリーランス(個人事業主)の場合、会社員のように12等分して毎月支払いを選択することはできません。
ちなみに、どちらを選択しても納税額は同じです。一括払いによる割引などはありません。
住民税の支払いのスケジュールとしては、以下のようになります。
5~6月頃、「納税通知書」が郵送にて到着。
■一括の場合の納付期限
6月末日まで
■分割の場合の納付期限
第1期支払い:6月末日まで
第2期支払い:8月末日まで
第3期支払い:10月末日まで
第4期支払い:翌1月末日まで
住民税の金額については、同年2~3月に行った確定申告にて申告した金額を元に自動的に決定されます。
住民税の金額は納税通知書が郵送で届く5~6月まで、自分で計算する必要はありません。つまり納税通知書が届いて初めて金額を知ります。
ただ、計算によって大まかな納税金額を把握することは可能です。計算方法については後述します。
5~6月頃郵送で届く納税通知書の中身については、以下のとおりです。
・住民税額の通知
・一括払い用の納付書
・分割(4回)払い用の納付書
住民税は、計算によってあらかじめ金額を把握する事が可能です。
納税通知書が届いてから慌てることのないよう、計算方法を知っておきましょう。
所得割の計算は、以下の計算式で求められます。
(①前年の総所得金額 - ②所得控除額) × ③税率 - ④税額控除額 = 住民税所得割額
①「前年の総所得金額」は、前年1月1日~12月31日に稼いだ金額の合計です。同年での確定申告書にて申告した金額が反映されます。
②「所得控除額」とは医療費や生命保険、配偶者や扶養の有無などの条件によって「総所得金額から差し引かれるお金」のことです。同年での確定申告書で申告した金額が反映されます。
③「税率」は原則10%です。内訳は市区町村民税が6%、都道府県民税が4%です。これは全国どの市区町村に住んでいても同じです。
④「税額控除額」は配当や住宅借入金、認定住宅の新築、ふるさと納税などの条件によって「税額から差し引かれるお金」のことです。税額控除は「税額」から差し引かれるお金で、①や②同様、同年での確定申告書で申告した金額が反映されます。
■前年の所得額780万円、独身フリーランスの例
(7,800,000 - 1,000,000※1) × 10% - 20,000※2 = 660,000円
※1基礎控除48万円+その他生命保険などで仮に算出
※2税額控除の項目「配当控除」該当の場合(株の配当20万円×10%)
■前年の所得額400万円、既婚者、認定新築を購入したフリーランスの例
(4,000,000 - 1,200,000※1) × 10% - 150,000※2 = 130,000円
※1配偶者控除33万円+基礎控除48万円+その他生命保険などで仮に算出
※2税額控除の項目「住宅ローン控除」該当の場合(年末時点でローン残高×1%)
一方で均等割の計算はシンプルで、以下の計算式で求められます。
①道府県民税 + ②市町村民税
①「道府県民税」は標準で1,500円です。
②「市町村民税」も①同様、標準で一律3,500円です。
したがって2022年現在、均等割の標準税率は5,000円となります。自治体によっては上記の標準金額と異なる場合もあるため、各自治体のHPなどでご確認ください。
ふるさと納税をすると翌年の住民税が控除されるメリットがありますが、仕組みをよく理解していない方も多いと思います。
この章ではふるさと納税が控除される仕組みや控除額、計算方法について解説します。
ふるさと納税制度は返礼品をもらうだけの制度ではなく、「自治体に寄附することで、住民税・所得税の対象になる」制度です。
通常通りに住民税を払おうが、ふるさと納税を利用して好きな自治体に寄附しようが、「道府県や市区町村にお金を払うこと」に変わりありません。
であれば通常通り住民税を払うより、生まれ育った故郷や災害などで困っている自治体、もしくはなんとなく自分が好きな自治体を選んで寄附をした方が気持ちいいものです。
さらに住民税の控除対象となり返礼品ももらえることから、令和3年に調査したふるさと納税に関する現況調査結果によると利用数は年々増加しています。
ふるさと納税によって控除される金額は、「寄附金額から2,000円を差し引いた金額」です。
例えば50,000円を寄附した場合、48,000円が翌年の住民税から控除されます。
住民税や所得税の金額が収入などによって変わるように、控除上限額もフリーランス(個人事業主)により異なります。
控除上限額を超えた額は控除が適用されず自己負担になるため、控除額上限は把握しておきましょう。
前提として、ふるさと納税を利用した場合の住民税控除額の計算方法には、以下の2種類があります。
下記基本分と特例分を足した額が住民税からの控除です。
・基本分
・特例分
・基本分
まず「基本分」は、計算式で求められます。
(寄附した金額 - 2,000円) × 10% = 住民税からの控除額(基本分)
10万円分の寄附をした方の場合、以下の通りです。
(10万円 - 2,000円) × 10% = 9,800円
したがって、翌年の住民税から9,800円が控除されます。
なお、控除の対象となるふるさと納税額は、総所得金額等の30%が上限です。
・特例分
次に、「特例分」は、以下の計算式で求められます。
(寄附した金額 - 2,000円) × (90% - 所得税率) = 住民税からの控除額(特例分)
10万円分の寄附をした方の場合、以下の通りです。
(10万円 - 2,000円) × (90% - 20%※) = 68,600
※例として所得税率20%で算出
したがって、翌年の住民税から68,600円が控除されます。
基本分と特例分を合計すると住民税は78,400円控除されるということです。
なお、特例分が住民税所得割額の20%を超える場合は、以下計算式で算出します。
(住民税所得割額) × 20% = 住民税からの控除額(特例分)
住民税の支払い方法や納付受付先や窓口、支払い方法について解説します。
まず「住民税の納付受付先や窓口」は、一般的に以下が挙げられます。
・銀行・郵便局などの金融機関
・税務署や市役所、区役所
・コンビニ
・インターネット(Yahoo!公金支払い ほか)
現金払いや口座振替はもちろんインターネットでの支払いも可能で、主にYahoo!公金支払いやペイジーが挙げられます。
次に「住民税の支払い方法」として、以下が挙げられます。
・現金払い
・口座振替
・クレジットカード(インターネット限定)
・スマホ決済アプリ(PayPayほか)
手元に現金がなくてもクレジットカードやスマホ決済アプリで納付できます。
スマホ決済アプリにはPayPayのほか、LinePay、auPay、d払い、J-CoinPayなどがあります。
・現金以外で支払う際の注意点
現金以外で支払う際の注意点が2つあり、それぞれ解説します。
・対応してない自治体もある
・金融機関はもちろん、コンビニでもクレジットカードは使えない
・対応してない自治体もある
クレジットカードやスマホ決済アプリは全ての自治体が対応しているわけではありません。例えば東京都では多くのスマホ決済アプリが利用できます。
住民税を支払う自治体の公式HPなどを確認し、わからなければお住いの自治体に直接確認しましょう。
・金融機関はもちろん、コンビニでもクレジットカードは使えない
クレジットカードが利用できるのは「インターネットでの支払いを選択した場合」に限ります。金融機関や自治体はもちろんですが、コンビニも同様です。
またインターネット決済には決済手数料が発生します。ポイントは獲得できますが、「決済手数料の方が獲得ポイントより高くて結果的に損した」とならないよう、事前にお持ちのカードのポイント還元率を確認することが大切です。
フリーランス(個人事業主)は、住民税を経費にできるのか気になっている方もいるかと思います。住民税を経費にすることはできません。
経費で落とせるのはあくまで「事業に必要な費用」です。その一方で住民税は「個人にかかる税金」です。「個人にかかる税金」は、「事業に必要な経費」に該当しないため、経費では落とすことはできないというわけです。
ただ、どうしても「住民税を事業資金から支払いたい」というケースもあると思います。その際には「事業主貸(じぎょうぬしかし)」という勘定項目で処理する方法が挙げられます。
経理の話になりますが、事業主貸とはフリーランス(個人事業主)の方のみ使用できる勘定項目のひとつです。
事業主貸で処理を行うことで、生活費や税金などといった「プライベートで使用する事業とは一切関係ない費用」を、事業用の口座から引き出すことが可能になるというメリットがあります。
とはいえ事業主貸はあくまで、「プライベートで使った費用と、事業で使った費用を明確に分けるためのもの」です。
事業主貸で処理しても最終的には確定申告で相殺し、差額を元入金(もといれきん)に振り替えて処理することになります。
そのため、もちろん経費の代わりにはならない上、結果として節税につながることもありません。
どちらにせよ、フリーランス(個人事業主)が住民税を経費にして節税できませんので、注意が必要です。
例えばフリーランス(個人事業主)が10万円の住民税を事業資金として預金口座から納付した際の仕分けは以下のようになります。
借方勘定科目 |
借方金額 |
貸方勘定科目 |
貸方金額 |
事業主貸 |
10万円 |
普通預金 |
10万円 |
以上、フリーランス(個人事業主)として知っておきたい住民税の概要や期限、支払い方法、ふるさと納税の関連性などについて解説してきました。
フリーランス(個人事業主)の方で、確定申告での処理や節税対策などまで手が回らず、損をしてしまっている方もいるかと思います。そのような事にならないよう、普段から住民税について知識を蓄えておくことが大切です。
なお、住民税は会社員にとっても他人事ではありません。社会人の一般常識としても「年間でどのくらいかかっているか」といったところから、興味関心をもっておきたいところです。
フリーランス(個人事業主)として正しい住民税の知識を身に付け、上手な節税を行った上で損失を減らすことにつなげていきましょう。
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