フリーランス(個人事業主)が知っておきたい「平均課税制度」とは?適用条件や計算式などを細かく解説!

フリーランス常識税金

公開日:2022.08.26

更新日:2025.03.24

独自で計算を行った上で確定申告を行うフリーランス(個人事業主)が理解しておきたいのが、「平均課税制度」です。平均課税制度を上手に活用できれば、節税につなげることができます。
毎年の収入が安定しないフリーランス(個人事業主)は、平均課税制度の意味やメリットを把握しておくことで、税金面でかかる負担を軽減できる可能性があるでしょう。

そこで本記事では、フリーランス(個人事業主)が知っておきたい「平均課税制度」の基本について解説します。
今現在フリーランス(個人事業主)として活動している方や、これからフリーランス(個人事業主)を目指す方は、ぜひ平均課税制度の意味やメリットを確認しておいてください。

 

 

 

1.平均課税制度とは?


フリーランス平均課税制とは関連画像
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平均課税制度とは、毎年の収入に大きな変動がある方を対象に所得税の納税額を緩和する制度です。

会社員のように企業に雇用されている立場の場合、基本的に給料は変わらず、昇給があったとしても数万円規模で収まるのが一般的です。

 

そのため毎年の所得税の納税額に関しては、大きく変動することはありません。

その一方で、フリーランス(個人事業主)のように毎年案件の総数や仕事の単価が変わる仕事をしている場合、突然収入が増えたり、逆にいつもより減少したりといったことも珍しくありません。

 

そのため所得税の納税額も大きく変わりやすく、その年の状況によっては収入に対して税負担が大きくなってしまう可能性があるのです。

平均課税制度は、このように不安定な収入で生活をせざるを得ないフリーランス(個人事業主)などを対象にした支援制度で、所得税の負担を軽減できます。

 

今現在フリーランス(個人事業主)として働いていて、去年の収入が例年よりも高くなってしまった方や、これからフリーランス(個人事業主)として本格的に活動をはじめる方は、税金面で損をしないように平均課税制度について確認しておくのがおすすめです。

 

一時的な収入アップ時に所得税の負担を軽減できる

平均課税制度を簡潔に説明すると、「一時的に収入が高まった際に、次年度に支払う所得税の負担を軽減できる制度」です。

主にアーティストやプロスポーツ選手、その他あらゆる業務に携わるフリーランス(個人事業主)の方が対象になります。

 

例えばアーティスト活動をしているフリーランス(個人事業主)の方が、今年展覧会などを開いて大きな収入があったとします。

しかし、来年に同じ収入額を得られる展覧会が開けなかった場合、前年の一時的な収入アップによって所得税の税率が高まったせいで、収入に見合わない納税額を納めなければならなくなります。

 

状況によっては、所得税の納税額が生活に支障を与える可能性もあるため、平均課税制度を活用して金額を抑えるのがポイントになっているのです。

 

 

所得税は基本的に「超過累進税率」によって決められる

日本における所得税の課税は、「超過累進税率」が適用されています。

これは前年の収入を参考に納税額を算出するシステムであり、その年の収入が大きくなるほど、翌年に納税する金額が増えるのが特徴です。

 

超過累進税率では収入が大きくなるほど、納税額を決定する税率も上がります。そのため何らかの臨時収入によって年収がアップした年があると、支払う税金がこれまでよりも高くなる恐れがあるのです。

超過累進税率では「年間の所得」と「税率」をかけあわせて計算が行われ、具体的な数値は以下のようになっています。

 

課税所得額 所得税率

控除額

195万円以下

5%

0円

195万円超330万円以下

10%

97,500円

330万円超695万円以下

20%

427,500円

695万円超900万円以下

23%

636,000円

900万円超1,800万円以下

33%

1,536,000円

1,800万円超4,000万円以下

40%

2,796,000円

4,000万円超

45%

4,729,000円

 

年収が195万円に届かない場合には、所得税率は最低値の5%になりますが、控除額がありません。

195万円以上になると所得税率が徐々に上がり、最終的には45%にまで上昇します。

 

その分控除される金額も高くなりますが、基本的に税金の負担は収入が高くなるほどに重くなるでしょう。

仮に年収が1,000万円の場合、計算式は

 

1,000万(収入)×0.33(所得税率)–1,536,000円(控除額)=176万4,000円(所得税の納税額)

 

となります。

各数値をこの式に当てはめれば、簡単に納税額を把握可能です。

 

一方で、平均課税制度の場合以下の計算方法で算出できます。

 

「変動所得と臨時所得」の20%に超過累進税率の税率をかけ、その金額を5倍する

 

例えば年収が1,000万円のフリーランス(個人事業主)が平均課税制度を活用する場合、以下のような計算式になります。

 

1000万円×20%=200万(この時点で所得税率が10% 控除額が97,500万に変わる)

(200万(平均課税制度によって計算された収入)×0.1(所得税率)–97,500万(控除額))×5=51万2,500円(所得税の納税額)

 

このように、同じ収入であっても平均課税制度を活用することで、所得税の納税額は1/3以下に抑えられます。

この事例の場合には年間で100万円以上の節税となることから、次年度の収入が減少しても月々の負担を小さくできるでしょう。

 

 

 

 

2.平均課税制度の対象となる条件


フリーランス平均課税制とは関連画像
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平均課税制度の対象になるには、特定の条件を満たす必要があります。

「フリーランス(個人事業主)=平均課税制度を使える」というわけではないので、以下で基本的な条件を確認しておきましょう。

 

臨時所得が大きく変動した場合

臨時所得とは、事業所得、不動産所得、雑所得などに該当する所得で、主にまとめて収入となる金額が支払われるものを指します。

例えば以下のような収入が、臨時所得に当てはまります。

 

プロスポーツ選手などがチームと契約する際の契約金
土地や建物などの権利金や頭金
休業や廃業を実施した際に受け取る補償金 など

 

これらの収入は毎年安定したものではないことが多いため、平均課税制度の対象となっています。

臨時所得が例年と比較して大きく変動した場合には、平均課税制度を申請することで節税が可能です。

 

 

変動所得が大きく変動した場合

変動所得とは、自然現象や事業の成果などによって1年間のうちに収入が大きく変わってしまう可能性の高い所得を意味します。

例えば変動所得には、以下のようなものが該当します。

 

印税や原稿料、作曲料など
音楽やイラストなどの著作権使用量
漁獲やのりの採取
はまち、まだい、ひらめ、かき、うなぎ、ほたて貝、真珠貝などの養殖

 

これらの事業に関しては、毎年安定した収入を実現することが難しいため、平均課税制度による節税が可能となっています。

フリーランス(個人事業主)として音楽活動、執筆活動、イラストの作成活動などを仕事にしている場合には、変動所得による平均課税制度を受けられる可能性があるでしょう。

 

 

それぞれの所得を平均課税制度に適用する条件

臨時所得と変動所得に該当する事業を行っているだけでは、平均課税制度を活用できません。

臨時所得と変動所得に当てはまる事業を行いつつ、以下の条件を満たすことが必要となります。

 

過去2年に変動所得があり、2年間の合計額の2分の1が本年の変動所得を超えない方は、本年の変動所得と臨時所得の合計額が本年の総所得金額の20%以上の場合
過去2年間の変動所得の合計額が本年の変動所得の金額以上方は、本年の臨時所得の金額が本年の総所得金額の20%以上の場合

 

この2つの条件を満たすことではじめて、平均課税制度を活用できます。

 

 

 

3.平均課税制度を利用する際の注意点


フリーランス平均課税制とは関連画像
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平均課税制度を活用する際には、いくつか注意点があります。

以下では、事前にチェックしておくべき注意点について解説します。

 

申告のための手続きが必要

平均課税制度を利用するには、事前に税務署に必要書類を提出して手続きを終えておかなければなりません。

具体的には確定申告の際に「変動所得・臨時所得の平均課税の計算書」が必要となるため、前もって準備をしておきましょう。

 

変動所得・臨時所得の平均課税の計算書は、国税庁のホームページから簡単にダウンロードが可能です。

はじめて変動所得・臨時所得の平均課税の計算書の作成を行う人を対象に、「変動所得・臨時所得の説明書」も公開されているため、こちらを参考にしながら記載を行うのがおすすめです。

 

 

経費がある場合にはそれぞれの所得で区分する

平均課税制度の利用時に、収入から差し引く経費がある場合には、臨時所得と変動所得ごとにきちんと区分しておかなければなりません。

例えば臨時所得に該当する仕事で使用した経費は、あくまで臨時所得のための経費として計算します。

 

臨時所得と変動所得で明確に区分できない経費に関しては、臨時所得、変動所得、それ以外の所得の比率に合わせて、基準を設けて按分(基準となる数に比例した割合で配分すること)を行って計算します。

その他、青色申告を行っているフリーランス(個人事業主)は、青色申告特別控除額も臨時所得、変動所得、それ以外の所得の比率に合わせて按分の計算が必要です。

 

 

平均課税制度は5年に遡って請求可能

平均課税制度は、過去5年間に遡って請求することができます。

これまで平均課税制度を知らなかった方も、過去に条件をクリアしていれば、改めて請求して節税が行えるのです。

 

基本的に確定申告によって申請を行った税金が修正できないことが多いですが、平均課税制度に関しては例外となるため過去5年間の所得を今一度確認し直してみてはいかがでしょうか。

 

 

適用されるのは所得税のみ

平均課税制度によって節税できる税金の種類は、あくまで所得税のみとなります。そのため毎年課税される住民税に関しては、平均課税制度による節税ができないので注意が必要です。

住民税は基本的に収入の10%を一定税率として計算し、納税額を決定します。

 

そのため収入が大きくなる分、収める税金も大きくなるため、フリーランス(個人事業主)として働く際には所得税とは別に住民税の納税にも備えましょう。

 

 

 

 

4.まとめ


フリーランス(個人事業主)として活動していると、仕事が上手くいって大きな利益を得られる年もあれば、暇が長くなって収入が減少する年もあるでしょう。

そんな不安定な収入事情に悩まされることが多いフリーランス(個人事業主)にとって、超過累進税率による前年度の収入を基準にした所得税の計算方法は、ときに生活に影響を与えるほどの重荷になり得ます。

 

そこでフリーランス(個人事業主)として働く場合には、平均課税制度による節税を活用し、収入減少時の負担を軽減するのがポイントです。

こちらで解説した制度の適用条件や計算式を参考に、収入が大きく変動する際には平均課税制度をぜひ活用してみてください。

 

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本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。

執筆者:フリーランススタート編集部

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