公開日:2020.11.20
更新日:2025.03.24
「フリーランス業に集中するため、仕事部屋がある家に引っ越したい」
「都心は家賃が高いので、田舎に引っ越してフリーランスを続けたい」
「自宅と仕事場兼用の場合、引っ越し費用は経費になるの?」
フリーランスの引っ越しは、それぞれの事情によって条件が大きく異なります。
この記事では、現在引っ越しを検討しているフリーランスの方に向けて、引っ越し費用の経費計上や、引っ越し前後に必要な手続きについて詳しく解説します。
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<目次>
1.フリーランスの引っ越し費用は経費にできる?
フリーランスが自宅を仕事場と兼用する場合の条件
2.フリーランスとしてどの引っ越し費用が経費になる/ならないを知ろう!
敷金
礼金
引っ越し業者への支払い
不動産屋への仲介手数料
火災保険などの保険料
3.フリーランスは1月1日から確定申告するまでに引っ越した場合、注意しよう!
4.フリーランスとして引っ越しに必要な手続き
納税地の変更手続き
国民年金の手続き
国民健康保険の手続き
給与支払いをしている場合の手続き
海外に引っ越した場合の手続き
5.まとめ
結論からいえば、フリーランスの引っ越し費用は経費として計上できます。
ただし、条件によって計上できる金額が異なります。
経費として計上可能な引っ越しの条件は、おおまかに二通りです。
1.自宅では無い、仕事場として使用する物件(事務所など)の引っ越し
2.仕事場と兼用している自宅の引っ越し
1の場合、引っ越し費用の全額を経費計上可能です。
2の場合は、引っ越し費用の一部が経費計上の対象となります。
以下で具体的にお伝えします。
フリーランスが自宅と仕事場を兼用している場合、仕事場として利用しているスペースの割合で、経費計上できる金額を計算します。
例えば、自宅全体の面積が80㎡であり、そのうち30㎡の一室を仕事場として利用している場合、計上できる引っ越し費用の割合は以下の通りです。
30㎡ ÷ 80㎡ × 100 = 37.5%
上記において引っ越し費用の合計が100,000円だった場合、37,500円が経費計上できる金額の目安となります。
仕訳例:引っ越し費用総額100,000円の場合
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
雑費(支払手数料) | 37,500円 | 現金 | 100,000円 |
事業主貸 | 62,500円 |
引っ越し費用全体のうち、経費計上できる37,500円を差し引いた62,500円については、自宅の引っ越し費用として扱います。
この場合の勘定科目は「事業主貸」です。
仕事場の面積の割合は大まかな申告でかまいませんが、利用比率に見合わない金額を計上した場合、確定申告の際に指摘される可能性があります。
引っ越し費用は、税務職員に説明できる金額で計上するようにしましょう。
フリーランスの引っ越し費用が経費として計上できることは、前章で説明した通りです。
しかし、全ての費用が経費計上の対象になるとは限りません。
どの引っ越し費用が経費になるか、仕訳処理はどうするかについて、項目別に解説します。
敷金は経費として計上できません。退去時に払い戻されることが前提の費用だからです。
勘定科目は「敷金」で、経費ではなく資産(投資その他の資産)として計上します。
退去の際、壁紙の張替えやフローリングの修理などを理由に、敷金から差し引かれた費用については、経費計上が可能です。
この場合の勘定科目は「修繕費」となります。
礼金は、敷金とは異なり退去時に払い戻されない費用です。
よって経費として計上できますが、金額によって仕訳処理が変わります。
礼金が20万円未満の場合、支払った期内で全額経費計上できます。
勘定科目は「地代家賃」です。
礼金が20万円以上の場合、経費ではなく繰り延べ資産としての扱いとなるため、数年かけて減価償却することになります。
仕訳時の勘定科目は「長期前払費用」です。
仕訳例:引っ越しの際、礼金300,000円を現金で支払った場合
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
長期前払費用 | 300,000円 | 現金 | 300,000円 |
減価償却の期間は契約によって決まるため、2年契約であれば2年で減価償却となります。
仕訳例:礼金300,000円(2年契約)のうち、1年あたりの礼金を費用計上する場合
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
地代家賃 | 150,000円 | 長期前払費用 | 150,000円 |
引っ越し業者へ依頼した場合の支払い費用は、勘定科目「雑費」もしくは「支払手数料」として経費計上可能です。
また、段ボール箱や梱包材をフリーランス自身で別途用意する場合、勘定科目は「荷造運賃」となります。
注意点として、ピアノなどの楽器類や仏壇など、フリーランスの事業に関係しない引っ越し費用は、経費として計上できません。
ただし、フリーランスのピアノ奏者や音楽教室を運営するフリーランス(個人事業主)であれば、楽器の輸送についても経費計上が可能です。
不動産屋への仲介手数料も、引っ越し業者への支払いと同様「雑費」、もしくは「支払手数料」として経費計上可能です。
火災保険や地震保険、損害保険などの保険料については、勘定科目「損害保険料」で経費計上できます。
ただし、保険の加入日によって仕訳の振替えが必要な点に注意してください。
例を交えて説明します。
仕訳例:火災保険契約(契約期間1年)の保険料を支払う場合
保険加入日:2020年6月1日
保険期間 :2020年6月1日~2021年5月31日
年間保険料:12,000円
決算 :12月31日
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
損害保険料 | 12,000円 | 現金 | 12,000円 |
決算が12月末のため、支払済保険料12,000円のうち、2021年分(2021年1月1日~2021年5月31日)の保険料6,000円については、次期の保険料として経費から外す必要があります。
仕訳例:前払した保険料を次期に費用計上する場合
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
前払費用 | 6,000円 | 支払保険料 | 6,000円 |
フリーランスとして経費について詳しく知りたい方は下記記事をご一読ください↓
確定申告の時期に引っ越すフリーランスは、申告書の提出先に注意が必要です。
2020年度の確定申告は「2021年(令和3年)2月15日~2021年(令和3年)4月15日」に実施されました。
引っ越し時期と確定申告のタイミング別に解説すると、申告書の提出先は以下の通りです。
・1月に引っ越す場合
申告書の提出先:転居後の新住所を管轄する税務署
・3月に引っ越し、3月に確定申告をする場合
申告書の提出先:転居後の新住所を管轄する税務署
・2月に確定申告を行い、3月に引っ越し予定の場合
申告書の提出先:転居前の旧住所(2月時点での住所)を管轄する税務署
いずれの場合も、確定申告の申告書は「納税地を管轄する税務署」へ提出することになっています。
フリーランスとして引っ越しの時期が確定申告に重なりそうな場合、転出届・転入届の提出時期に気をつけましょう。
フリーランスの引っ越し前後に必要な手続きについてまとめました。
引っ越し直前に焦らないよう、用意する書類や流れについてあらかじめ把握しておきましょう。
フリーランスが事務所や自宅兼仕事場を引っ越す場合、所得税・消費税の納税地の異動に関する届出手続きが必要となります。
提出のタイミングは「納税地の異動があった後、遅滞なく」とありますから、引っ越し先で転入届を提出した後に手続きを行います。
提出先が「転居前の旧住所を管轄する税務署」である点に注意してください。
書類の提出方法は、税務署へ直接持参の他、郵送も認められています。
なお、納税地の変更手続きには、フリーランスの本人確認が必要です。
免許証などの身分証による身元確認と、マイナンバー(個人番号)確認の両方が必要となるため、マイナンバーカードが無い場合は、マイナンバー(個人番号)記載の住民票を添付すると良いでしょう。
フリーランスとしてマイナンバーカードについて詳しく知りたい方は下記記事をご一読ください↓
国民年金の手続きは、引っ越した先で転入届を提出する際、市区町村役場の窓口で行います。
引っ越し後14日以内に行いましょう。
なお、マイナンバー(個人番号)と基礎年金番号が紐づいている場合、日本年金機構と市区町村役場の間で、自動的に情報連携が行われます。
過去に年金に関する各種手続きにおいて、マイナンバー(個人番号)を記入したことがあれば、手続きは必要ありません。
国民健康保険の対象となるフリーランスは、忘れずに手続きをしましょう。
国民健康保険は国民年金同様14日以内に、引っ越した先の市区町村役場で手続きを行いましょう。
フリーランスとして異なる市区町村へ引っ越しをする場合、引っ越し元で「資格喪失手続き」を、引っ越し先で「加入手続き」を行います。
新しい国民健康保険証を入手次第、古い国民健康保険証は引っ越す前の市区町村に返却します。
フリーランスとして同じ市区町村内で引っ越しする場合は国民健康保険の「住所変更」手続きを行いましょう。
なお、国民健康保険料は引っ越しを行った月を含めてそれ以降、引っ越した先の市区町村で課税されます。
国民健康保険料を納付書で支払っている場合、引っ越し前の納付書は使用できません。手続き完了後に郵送される新しい納付書を使用しましょう。
フリーランスとして従業員を雇っている、もしくは家族に対して青色事業専従者給与を支払っている方は、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」を提出する必要があります。
提出先は「転居前の旧住所を管轄する税務署」です。
引っ越し後1か月以内に手続きを行いましょう。
フリーランスとして海外移住やノマドワーカーを目指している方、配偶者の海外転勤で国外に引っ越す予定のある方は、通常の引っ越しとは異なる手続きが必要となります。
1年以上日本に戻らない場合、原則として日本の住民票を抜くことになります。
手続きは以下の通りです。
海外へ引っ越す場合、納税地の変更ではなく、日本での事業を一旦廃業するかたちとなります。
提出時期は、日本国内で請け負った業務を終えてから1か月以内、提出先は事業管轄地の税務署です。
フリーランスとして青色申告を行っていた場合、事業を終えた年の翌年3月15日までに届け出が必要です。
提出先は廃業届と同じく、事業管轄地の税務署です。
・海外転出届
転出予定日の14日前から提出可能です。
なお、住民税は1月1日現在に住民票がある市区町村で課税されます。つまり、12月末までに海外転出届を提出すれば、翌年度の住民税について支払い義務はありません。
・国民年金の任意継続手続き
年金保険料についても支払い義務は無くなりますが、年金の支払い期間は将来の受給額に影響します。
フリーランスとしていずれ日本に帰国する予定があれば、支払いの任意継続も選択肢の一つです。
任意継続の手続きは、各自治体の役所窓口や年金事務所で行えます。
海外転出届を提出した場合、日本の所得税法上「非居住者」として扱われるため、原則として日本へ所得税を納める必要はありません。
引っ越し先の居住国の法律に従い納税してください。
ただし、非居住者扱いのフリーランスでも、国内源泉所得にあたる収入を得ているケースでは日本での納税義務が発生します。
国内源泉所得に心当たりのある方や、海外転出後の納税に不安を感じる方は、税理士会が定期的に実施している税務相談会への参加をおすすめします。
フリーランスとして経費について詳しく知りたい方は下記記事をご一読ください↓
フリーランスが引っ越す際に必要な、経費計上や手続きのノウハウについて解説しました。
フリーランスは引っ越し前後の忙しさにかまけて手続きを忘れると、確定申告でのトラブルの原因になりかねません。
引っ越しの予定が決まった時点で、フリーランスの引っ越しに必要な手続きについて、早めに確認しておくことをおすすめします。
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本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。
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