公開日:2023.02.17
更新日:2025.03.24
様々な議論がなされてきたインボイス制度ですが、2023年10月の導入が間近に迫ってきました。
好むと好まざるとにかかわらず、すべての企業はインボイス制度がもたらす変化を意識する必要があります。
今回は、インボイス制度と連携する際のいわゆる抜け道と、自社の対応を考える上で参考になる情報を取り上げています。
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<目次>
1.インボイス制度とは
2.仕入税額控除は現在とインボイス制度導入後ではどう変わるのか?
インボイス制度導入前の仕入税額控除の仕組み
インボイス制度導入後の仕入税額控除の仕組み
インボイス制度に対する対応の遅れ
3.インボイス制度は、抜け道でカットできるのか?
非課税の取引は対象外
個人を顧客として仕事をしている場合
課税事業者がクライアントの場合
上記以外の抜け道はない
4.免税事業者が課税事業者になりうるかどうか
5.簡易課税制度
6.インボイス制度の問題点
7.インボイス制度導入後も一定期間控除が認められます。
8.インボイス制度にどう対応するか?
自分への影響を把握する
インボイス制度の手順を確認する
消費税の課税手続き(免税事業者の場合)を確認する
インボイス制度に対応した受注・請求管理システムの導入
9.まとめ
インボイス制度は「消費税の正確な額」を把握するために導入される制度です。
日本の消費税には現在10%と軽減税率の8%の2つの税率があります。
このことによる問題は、どの税率がどの商品にどの取引で適用されるかを明確に把握できないことであると考えられており、これが「適格請求書(インボイス)」が導入される理由です。
買い手は売り手が発行したインボイスを保管することにより、仕入税額控除が可能になります。
そして売り手がインボイスを発行するには、税務署に適格請求書発行事業者として登録し、登録番号を取得する必要があります。
対象となるインボイスには、具体的に次の項目を含める必要があります。
・発行側の事業者の名称及び登録番号
・取引日
・取引内容
・適用税率別の対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率
・適用税率ごとの消費税額
・受け取り側の事業者の名称
消費税を納めている事業者にとっては仕入税額控除の適用は重要な事柄です。
インボイス制度の導入で仕入税控除制度がどう変わるのか、比較してみましょう。
仕入税額控除とは仕入時に支払った消費税を販売時に受け取った消費税から控除することです。
課税事業者は仕入税額控除により計算された消費税額を納付します。
従来の区分記載請求書等保存方式では、特別な登録なく仕入税額を控除することができたため、計算した消費税額をそのまま納付することができました。
また免税事業者は消費税を納付する必要はありません。
改めて説明すると免税事業者とは、主に一定期間の課税売上高が1,000万円以下の事業者のことで消費税の納税義務が免除されています。
インボイス制度の導入により、仕入税額控除はインボイスが発行された場合にのみ適用されます。
つまり、インボイス制度に登録されていない課税事業者や免税事業者との取引では、仕入時に支払った消費税を控除することができません。
たとえば、売上の消費税が12,000円で、購入の消費税が6,000円の場合、差額6,000円を納付するのが今までの制度です。
今後はインボイスを受領していない場合は、仕入税額控除が認められないため、消費税12,000円を支払う必要があります。
2022年9月現在、インボイス制度に登録済みの「適格請求書発行事業者」は3割程度と推定されます。
制度に対応する事業者数は、一般的な観点からすると、それほど順調に伸びているとは言えず、制度に対する認知・理解も進んでいないのが現状と言えるでしょう。
ニュースや新聞で「インボイス制度」という言葉は知っていても、インボイス制度の全容を本当に正しくは理解していないフリーランスが少なくないのも現実です。
フリーランスの内、少なくない方が制度の詳細を理解しておらず、何から手をつければいいのか、具体的にどのような結果になるのか予測できていないと考えられます。
なお、政府は適格請求書発行事業者登録の受付は原則2023年3月末までに申請する必要があったが、未登録の事業者が残っており、事情を問わず2023年9月末まで受け付けるに方針を変更しています。
インボイス制度は全体を理解するのが簡単ではない上、ビジネスへの影響は重大です。
対応しなくてもいいのであれば、対応しないで現状維持でいきたいという方も結構いらっしゃるようです。
そこでインボイス制度にいわゆる「抜け穴」はないのかと疑問に思うかもしれません。
簡単に言えばインボイス制度に抜け穴はありません。
インボイス制度は国の税金の納付に関する制度で、不正行為に対しては罰則が設けられています。
インボイス制度の大きな肝である「適格請求書発行事業者」になるか否かの選択は任意ですが、抜け道はありません。
抜け穴として使用が想定される手段について違法性が疑問視される可能性があります。安直な考えを持たないのが得策です。
インボイス制度に関する罰則は「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。
取引事実を装った書類、偽造、貸付・貸付登録番号、虚偽の記載等は、上記に該当する可能性のある不正行為とみなされます。
適格請求書発行事業者にならない場合の合法的な対処法は次のとおりです。
・消費税負担分の値引き交渉
この場合、独占禁止法や下請法に違反しないように、双方が納得できるように交渉する必要があります。
・消費税負担分の値引き交渉
少額取引の場合、最初から消費税を上乗せせずに実費のみでやり取りする方法もあります。
いずれの方法においても、個々の状況や取引の性質によって最適な解決策は異なります。
また、法令に抵触しないよう十分な注意を払う必要があります。
以上より、インボイス制度の「抜け穴」を利用するのではなく、事業者にとってマイナスの影響をできるだけ回避できる対策を講じることが大きなポイントであると言えます。
インボイス制度は非課税取引には適用されません。
消費税は消費に公平な負担をかけるものでが、消費とされないものや社会政策的配慮が必要となるものは非課税取引です。
たとえば、土地や有価証券の譲渡、ローンの利子、医療、社会保障サービス、教育、住宅貸付けなどは非課税取引です。
非課税取引においての販売に関連する仕入については仕入税額控除は利用できません。
インボイス制度はインボイスを保存することにより課税事業者が仕入税額控除を受けることを可能にするシステムです。
課税事業者ではない個人は仕入税額控除を受けることはなく、適格請求書を受け取る必要はありません。
したがって、課税事業者ではない個人を顧客とする場合、インボイス制度に登録されていない課税事業者や免税事業者のままであっても、取引への影響は少ないと言えます。
ただし将来的には個人の確定申告のためにインボイスを発行する必要が出てくるケースも想定されます。
課税事業者と外注という形で業務委託契約を結んでいるフリーランス(個人事業主)の場合、外注から雇用に切り替えてもらうという手段もあります。
これは会社が従業員になることで賃金を受け取り、報酬を外注費として受け取っていない場合、インボイス制度に関連する問題はすべて解決できるためです。
しかし従業員になるという方法は、課税事業者にとってもフリーランス(個人事業主)にとってもデメリットがあります。
雇用は費用負担を増加させるため、課税事業者は必ずしも従業員になることに同意するとは限りません。
また、自営業者の側は自由に働けなくなったり、他の取引先が持てなくなったりするので雇用されることが必ずしもメリットとは言えない状況も想定されます。
上記の方法以外の場合、インボイス制度の影響を回避することは困難です。
インボイス制度の目的は、消費税の税率と金額を正確に把握することです。
2019年10月から始まる軽減税率に合わせて制度を導入する予定でしたが、影響が大きくなることが懸念され、2023年10月から導入することになりました。
インボイス制度の廃止を求める声もありますが、軽減税率導入以降の規定路線となっているため、今後変わるとは考えにくいでしょう。
インボイス制度の導入により、対象となる請求書が大幅に変更されます。
インボイスを発行するには、その方法を理解し「適格請求書発行事業者」になる必要があります。
適格請求書発行事業者となる条件の一つに、課税事業者であることがあります。
課税売上高が1,000万円以下の事業者は「免税事業者」であり、消費税を支払う必要がなく、免税事業者はインボイスを発行することができません。
したがって、免税事業者はまず「課税事業者」になることを決定しなければなりません。
課税事業者になると、これまで納税する必要のなかった消費税を支払う必要がありますが、インボイスを発行できるようになります。
免税事業者が課税事業者となるためには、2023年3月31日までに「課税事業者選択届」と「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出することで手続きが完了します。
課税売上高が1,000万円以下のフリーランス(個人事業主)で、課税事業者になることによる消費税の納付義務が気になる方も多いのではないでしょうか。
そこで簡易課税制度を考慮に入れてみていただきたいと思います。
簡易課税制度は課税売上高が5,000万円以下の事業者が選択できる課税方式で、受け取った消費税の総税額を計算し、それに「みなし仕入率」を乗じて仕入税額控除を計算します。
みなし仕入率は、事業者の業種によって異なります。
例えばシステム開発の場合、サービス業に該当することが多く第5種事業となるため、みなし仕入率は50%です。
この方法を適用すると、消費税の通常納付に比べて税額を軽減することができるケースがありますので、導入することを検討してください。
ただし簡易課税制度の問題点は、消費者の税負担が必ずしも軽減されるとは限らないことです。
簡易課税制度は、税の処理の仕組みの一つであり、消費税の簡易計算を適用できる措置であるものの、簡易課税制度を選択した結果、消費税の申告額が増加するケースもあります。
特に気をつけなければならないのは、設備投資や事業拡大で経費が膨らむ年です。
支出に対する消費税の額が多ければ多いほど、より多くの仕入税額控除を受けることができるからです。
簡易課税制度が気になるという方は、事前に想定される消費税を計算してから選ぶことが大切です。
消費税を受け取る側(売り手)の免税事業者にとって最大の問題は、そのままではインボイスを発行できないことです。
前述のとおり、仕入税額控除を受けるにはインボイスを保存する必要があります。
消費税を支払う側(買い手)はインボイスを発行できない免税事業者との取引は消費税の負担増につながります。
一方で、売り手は買い手から値引きを強要される可能性もあります。
課税事業者である買い手は免税事業者に消費税を支払っても仕入税額控除を受けることができません。
そのままでは消費税の負担が増えるため、免税事業者との取引が多い課税事業者は早急に対応する必要があります。
免税事業者との取引について相手方はインボイス制度導入後、仕入税額控除を受けることができなくなります。
つまり、取引の一部として支払った消費税は、控除できずにそのまま支払わなければならないということです。
ただしすぐに仕入税額控除が直ちに失われるわけではありません。
インボイス制度導入後6年以内であれば、免税事業者からの仕入れについても、以下の条件を満たす場合、一定割合の仕入税額控除が可能です。
・インボイスと同じ内容の記載がある請求書等を保存する
・経過措置を受ける旨を帳簿に記載する
期間 |
控除できる割合 |
2023年10月1日~2026年9月30日 |
80% |
2026年10月1日~2029年9月30日 |
50% |
この割合は段階的に引き下げられるので、課税事業者への切り替えを検討されている方は、できるだけ早く手続きを行った方が良いでしょう。
しかし、課税事業者に切り替えるべきかどうかの判断は簡単ではないでしょう。
この章ではインボイス制度に向けて、今後必要な対応を説明します。
まずはインボイス制度がどういうものかをしっかりと理解した上で、自分の業務内容や業務システムをきちんと把握することが必要です。
自分の業務がインボイスを必要とするのかしないのか、請求書発行システムを導入することでどの程度の影響があるのかを見極めることが重要です。
免税事業者である個人を顧客とする場合はインボイスの提出を要求されないため、影響を受けない可能性が高いです。
インボイスを発行するためには、適格請求書発行事業者となる必要があります。
そのためには、適格請求書発行事業者としての登録を申請する必要があります。
現在、課税事業者であってもここで登録申請しなければインボイスを発行できません。
この登録手続きにより適格請求書発行事業者登録番号が発行され、初めてインボイスを発行できるようになります。
課税事業者となるためには「消費者事業者選択届出書」を提出し、必要な手続きを行う必要があります。
ただし、適格請求書発行事業者登録簿の登録日が2023年10月1日から2029年9月30日までの課税期間内にある場合は、「課税事業者選択届出書」の提出なしに登録が可能です。
つまり、インボイス制度に対応し該当期間中に課税事業者となるための手続きは同一です。
なお、インボイス制度に対応した場合、消費税の納税義務が発生するため書類の確認や納税額の計算などの準備作業が必要となります。
インボイス制度に対応するためのコストを懸念する企業は少なくありません。
請求書を現在の「個別明細書」から「適格請求書」に変更しなければならないからです。
インボイス制度の導入に伴う事務作業を軽減するためには機器やシステムの導入が効果的ですが、金銭的な負担はできるだけ少なくしたいという方も多いと思います。
会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECソフトに加え、レジなどのハードウェア・クラウド利用料・導入費用などを対象とする補助金も存在していますので気になる方は調べてみると良いかもしれません。
これまで免税事業者であった場合、インボイス制度への対応を非常に難しく感じるかもしれませんが、インボイス制度の導入は既に決定されています。
適格請求書発行事業者となるかどうかにかかわらず、まずは制度を理解することが必要です。
その後、適格請求書発行事業者となる場合は、法令に基づき必要な準備を行うことになります。
自分に何が必要かを慎重に見極め、必要な手続きを進めていく必要があります。
できるだけ早く行動すれば、事務負担も少し軽くなります。期限が迫ってから慌てないように早く始めましょう。
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