公開日:2023.03.23
更新日:2025.03.24
医療費控除は所得税の計算上、所得から控除されますが、同様にふるさと納税の寄附金控除も所得から控除されます。
そのため、2つの控除を併用できるかどうかや併用する上での注意点を知りたいという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
結論から言えば、医療費控除とふるさと納税は併用できます。ただし併用すると、ふるさと納税のワンストップ特例制度が使えなくなり、サラリーマンでも確定申告が必要になります。
また医療費控除を受けると、ふるさと納税で寄附できる上限額が少なくなってしまいます。
そこで今回は医療費控除とふるさと納税を併用した場合の注意点などをご理解いただけるように解説していきます。是非、ご参考にしてください。
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<目次>
1.ふるさと納税の控除と医療費控除は併用できる?
所得税の仕組み
ふるさと納税の仕組み
医療費控除のしくみ
医療費控除の対象となる項目とならない項目
2.セルフメディケーション税制
3.ふるさと納税の寄附金控除と医療費控除を併用する場合の注意点
ふるさと納税で寄附できる上限額が減額される
控除は確定申告の時にしか申請できない
確定申告に必要な書類
4.ふるさと納税とiDeCo(個人型確定拠出年金)を利用する際の手続きと注意点
5.まとめ
ふるさと納税の寄附金控除と医療費控除はどちらも、所得税計算上の所得についての控除制度です。
ただし併用する際には注意点があり、場合によってはうまくいかないことも想定されます。
それぞれの制度を上手に活用すれば、年間の税負担は減りますので、まずはこれらの制度についてよく理解しておくようにしましょう。
ふるさと納税の仕組みを説明する前に、所得税がどのように計算されるのかを説明します。
所得税は大まかに言うと以下の計算式で計算されます。
所得税=(収入-必要経費-所得控除)×税率
つまり、所得税を安くするには以下のことを実施する必要があります。
・収入を減らす
・必要経費を増やす
・所得控除を増やす
特に所得控除を正しく使うことが節税の大きなポイントであり、そのひとつが「ふるさと納税」です。
ふるさと納税には「納税」という言葉がつきますが、実際には県や市町村への寄附金です。
通常市町村に寄附をすると、確定申告の際に寄附金額の一部が所得から控除されます。
しかしふるさと納税は自己負担額2,000円を除き、原則として全額が所得控除の対象となります。
例えば2万5000円を自治体に寄附した場合、所得控除額は2,000円を超えている部分の2万3,000円となります。
以前ふるさと納税で所得控除を利用するには、サラリーマンでも確定申告をする必要がありました。
しかし最近では、一定の条件を満たせば、確定申告をしなくてもよい「ワンストップ特例」があり、所得税の控除を受けることができるようになっています。
ワンストップ特例については、後ほど詳細を説明します。
ふるさと納税の所得税からの控除額は以下の通りです。
(1)所得税からの控除 = (ふるさと納税額-2,000円)×「所得税の税率」
所得税控除額は上記(1)の式で決定されます。
ふるさと納税で所得控除される金額の上限は、総所得金額の40%です。
2037年の寄附までは、所得税率に復興特別所得税率を加算した税率になります。
また所得税率は、寄附者の課税所得をもとに算出されます。所得税率は課税所得の増加に伴い上昇します。
ふるさと納税の住民税からの控除には「基本分」と「特例分」があり、控除額は以下の通りです。
(2)住民税からの控除額(基本分)=(ふるさと納税額-2,000円)×10%
ふるさと納税の住民税からの控除の基本部分は上記(2)式により決定されます。
ふるさと納税の所得控除額の上限は、総所得金額の30%です。
(3)住民税からの控除額(特例分)=(ふるさと納税額-2,000円)×(100%-10%(基本分)-所得税の税率)
住民税からの控除の特例分は、この特例分が住民税所得割額の20%を超えない場合には、上記(3)の算式により決定されます。
上記(3)の所得税率は、個人住民税の課税所得金額から人的控除差調整額を差し引いた金額より求めた所得税の税率であり、上記(1)の所得税の税率とは異なる場合があります。
(3)`住民税からの控除額(特例分)=(住民税所得割額)×20%
特例分((3)により計算する場合の特例分)が住民税所得割額の20%を超える場合は、上記(3)`の式となります。
なお住民税には、所得に応じて負担が必要な所得税と、所得に関係なく一定額を徴収する均等割があります。
この場合(1)・(2)・(3)'の3つの控除額の合計では(ふるさと納税額-2,000円)の全額が控除されるわけではなく、実質負担額は2,000円を超えます。
※具体的な計算方法は、お住まいの市町村にお問い合わせください。
ただし、お住まいの自治体によっては、控除の対象となるふるさと納税額の上限はお答えできない場合がある、とされています。
医療費控除制度は、1月1日から12月31日までの1年間に支払った医療費が、基本的にに10万円を超えた場合に、所得から一定額を差し引くことができる制度です。
年間所得が200万円未満の方は、10万円ではなく総所得の5%を超える金額を控除することができます。
医療費を支払った場合、加入している健康保険組合から以下の書類が届きます。
・医療費通知
・医療費のお知らせ
これらの書類から、支払った医療費の金額を確認することができます。
ちなみに医療費控除は医療費だけでなく、通院時に発生した交通費なども請求できます。
また、自分だけでなく、配偶者や同居の親族のために支払った医療費も含めることができます。
医療費控除額の計算式は以下の通りです。(最高で200万円)
実際に支払った医療費総額 − 保険金などで補てんされる金額(※)− 100,000円(その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5パーセントの金額)
(※)生命保険契約等による入院給付金・および健康保険による高額療養費・家族療養費・出産一時金など
例)年収500万円、医療費が年間40万円の場合
¥400,000 − ¥100,000 = ¥300,000
減税額(所得税):300,000円 × 20%(所得税率)= 60,000円
国税庁のHPによると医療費控除の対象となるのは、以下の医療費です。
・医師や歯科医師による治療や療養の対価
・治療やリハビリに必要な薬の購入の対価。例えば、風邪の時の風邪薬など
・病院・診療所・介護老人保健施設・介護療養型医療施設・介護老人福祉施設・地域密着型介護老人福祉施設・助産院などでの入院に関連する人的サービスの提供に対する対価
・あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師が提供する施術への報酬
・看護師、看護助手、看護助手または特に依頼された者が行う療養上の世話に対する対価(家政婦が病人の世話を依頼された場合の療養上の世話に対する対価も含まれる)
・出産時の助産婦の手伝いに対する対価
・介護福祉士等による喀痰吸引・経管栄養に対する対価
・介護保険等の制度に基づき提供される一定の施設・介護サービスにかかる自己負担額
・医師等から診療等を受けるために直接必要な以下の費用
a)医師等による治療等のための通院費用、医師等の送迎費、入院中の宿泊費および食費、コルセット等の医療機器の購入またはレンタルに要する費用で、通常必要とされるもの
b)医師等から治療を受けるために直接必要な義肢・松葉杖・補聴器・人工歯等の購入に要する費用。
c)身体障害者福祉法、知的障害者福祉法などの規定により都道府県及び市町村に支払われる費用で、治療等の費用及び上記a)、b)に準ずる費用に相当する費用
d)傷病により概ね6ヶ月以上寝たきりで、医師の治療を受け、おむつの使用が必要と認められる場合のおむつ代
この場合、医師が発行する「おむつ使用証明書」が必要です。なお2年目以降におむつに係る医療費控除を受ける場合、介護保険法の要介護認定を受けている一定の方は市町村長等が発行する「おむつ使用確認書」等をおむつ使用証明書に代えて使用できます。
・骨髄移植の手配のための患者負担金(骨髄移植推進財団に支払う)
・日本臓器移植ネットワークに支払われる臓器移植の斡旋のための患者負担金
・ 高齢者医療提供法に基づく特定医療相談の一定の条件を満たした方の自己負担金で(2008年4月1日から適用)。
医療費控除を受ける場合、治療費の領収書やレシートが必要になりますので、必ず保管しておきましょう。
一方、医療費控除の対象とならないのは、以下の医療費です。
・容姿の改善等を目的として行われる整形手術の費用
・健康診断の費用
・タクシー代(電車やバスなどの公共交通機関が利用できない場合を除く)
・自家用車で通院した場合のガソリン代・駐車場代
・近視または遠視のための眼鏡や補聴器等の購入費用で治療に直接必要でないもの
・親族に支払われる療養上の世話の対価
・疾病の予防または健康増進のための物品に対する支出(予防接種・サプリメント等に対する支出を含む)
・親族が提供したサービスに対して支払われる謝礼など
セルフメディケーションとは、WHOの定義では「自分の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調を自分で治療すること」です。
つまり、薬局で買える市販の薬を上手に使って、病気予防や体調管理を行い自分の健康を守る(維持する)ことを意味します。
例えば、風邪の症状が出たときに市販の風邪薬を飲んで、悪化しないようにするのがセルフメディケーションです。
では最近始まった「セルフメディケーション税制」とは、どのようなものなのでしょうか。
健康の保持増進や疾病の予防に一定の取組を行っている方が、その年に自分自身・配偶者・同居の親族のために12,000円を超える対象医薬品を購入した場合、セルフメディケーション税制が適用されます。
一言で言えば、市販薬の購入金額が一定額を超えた場合に、その金額を課税所得から差し引くという制度です。
つまり、税金の負担が少なくなる、とてもお得な制度なのです。
この制度が導入された前提には、医療費の増大があります。
軽症で病院などの医療機関を受診せず、医療用医薬品と同じ成分を含む市販薬で健康管理をすることで、医療費の削減を図るのが狙いです。
税額控除を提供する新税制は、前述の「セルフメディケーション」を促進し、自らの健康管理や病気予防の意識を高めることも目的としています。
この制度は、以下の3つの条件をすべて満たす方が対象となります。
・所得税・住民税を支払っている
・確定申告の対象となる年(1月~12月)に一定の健康診断(メタボ健診)・予防接種・定期健康診断(勤務先健診)・健康診断・がん検診を受けたことがある。
・現在、医療費控除を受けていない
なお、予防措置として所得税のセルフメディケーション税制の控除と通常の医療費控除を併用することはできません。
そのためどちらを適用するかご自身で判断しましょう。
ふるさと控除と医療費控除は併用できます。
しかし、それぞれの控除額の全額を適用できるわけではありません。
なぜ、両方の控除が全額使えないのかというと、医療費控除がふるさと納税の控除限度額の計算に影響するためです。
医療費控除を受けると課税所得が減るので、所得税も住民税も減額されます。
それに伴い、ふるさと納税の控除限度額の計算に使用する「個人住民税所得割額」の金額も減額されます。
医療費控除を併用する場合は、所得税の一人当たりの限度額が医療費控除の2~4.5%減額されるとされています。
医療費控除を受けると、ふるさと納税で提出したワンストップ特例は無効となります。
ワンストップ特例は、1年間に5つ以下の自治体にふるさと納税をした場合、確定申告をせずに申告するだけで所得控除が受けられるという、2015年4月から実施されている便利な制度です。
ワンストップ特例でふるさと納税をした場合、所得税から控除なされず、翌年に納めるべき住民税の金額を減らすことで控除されます。
ただし、医療費控除を受けるためには、いずれにしても確定申告をする必要があります。
そのため、ふるさと納税の特別控除の適用を受けていても、その特別控除は無効となり、所得税の確定申告が必要となります。
また、セルフメディケーション税制も確定申告が必要ですので、セルフメディケーション税制を併用する場合は、確定申告が必要です。
確定申告をすると、医療費控除とふるさと納税の寄附金控除を同時に適用することができます。
普段から確定申告をされている方であれば問題なく行えますが、確定申告をしたことがない方は、面倒な手続きが必要になります。
ワンストップ特例制度は、ふるさと納税の際に非常に便利な制度でしたが、この制度が使えなくなることがふるさと納税の控除と医療費控除の併用の一つの難点です。
以下は、寄附金控除や医療費控除を行う際に必要な書類の一覧です。
確定申告をする前に、これらが手元にあることを確認しておきましょう。
・寄附金受領証明書
自治体から送付される寄附金受領証明書です。返礼品とは別に送付されます。紛失すると再発行が困難なため、大切に保管してください。
サラリーマンの場合は、毎年12月頃の年末に勤務先の会社から入手できます。あなたの総収入とあなたが支払った所得税の額を示す書類です。
・本人確認書類(マイナンバーカードまたはマイナンバー通知カード+本人確認証明書)
マイナンバーカードをお持ちの方は、カードの両面のコピーで十分です。
マイナンバー通知カードのみ、またはマイナンバーが記載された住民票のみをお持ちの場合は、本人確認のための追加書類が必要です。
運転免許証やパスポートを身分を証明する書類として利用できます。
iDeCoは、公的年金(国民年金・厚生年金)とは別に給付を受けることができる私的年金制度です。
国民年金第1号被保険者(自営業者等)はiDeCoに加入できます。
公的年金とは異なり、加入は任意で自分で加入の申し込みや拠出金の拠出・運用を行い、拠出金と運用益の合計に応じた給付を受けることができます。
公的年金と組み合わせることで、より豊かな老後生活を送ることができるとされています。
iDeCoは支払った保険料が全額所得から控除されるため、節税効果があるのが魅力です。
ただし、iDeCoでは医療費控除と同様、所得税や住民税の金額が低くなるため、ふるさと納税の控除限度額も低くなる点に注意が必要です。
今回は、ふるさと納税と医療費控除を組み合わせて、税負担を軽減する方法をご紹介しました。
併用する場合は、医療費控除によってふるさと納税の控除限度額が変わることには改めて注意が必要です。
控除限度額が変わると納税の負担が増えるので、事前に税負担を再計算しておくことを忘れないようにしましょう。
ふるさと納税と医療費控除を併用する場合は、確定申告を実施する必要があります。
ただし一見複雑そうに見える確定申告でも、ひとつひとつ手続きをすれば意外と簡単に感じるかもしれません。
年間の税負担を少しでも減らすために、確定申告を利用してふるさと控除と医療費控除を併用してみてはいかがでしょうか。
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