公開日:2023.07.01
更新日:2025.03.24
法人と個人事業主の大きな違いとして税金の種類が挙げられます。
法人には法人税・法人住民税・法人事業税・特別法人事業税・消費税などの税金がかかります。
法人は個人事業主と比べて経費として計上できる範囲が広く、所得によっては個人事業主ではなく法人化した方が節税額が大きくなる場合もあります。
控除額などで変動がありますが、一般的には事業所得が700万円以上になったら法人化を検討すると良いと言われています。
所得が増えて法人化を検討している個人事業主や初めて会社設立をした人は、ぜひ参考にしてください。
この記事では法人にかかる税金を中心に説明します。
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<目次>
1.法人にかかる税金の種類
法人税
法人住民税
法人税割
均等割
法人事業税
特別法人事業税
消費税及び地方消費税
2.法人税が課される法人と法人税が課されない法人
法人税が課される法人
法人税が課されない法人
3.法人税が課される「所得」とは?
法人税の計算で損金算入されないもの
4.法人税を延滞した場合
5.実効税率とは?
6.個人事業主にかかる税金の種類
所得税
復興特別所得税
個人住民税
均等割
所得割
個人事業税
消費税及び地方消費税
7.そのほかの税金
自動車税
固定資産税
8.法人税の節税対策
法人での青色申告
税制優遇制度の活用
税額控除
9.まとめ
法人とは法律上人格が認められた自然人とは異なる法的な実体です。
会社を設立すると、会社の代表者である自然人とは別に、法律上の存在である法人が生まれます。
法人には主に以下の5つの税金が課せられます。
・法人税
・法人住民税
・法人事業税
・特別法人事業税
・消費税および地方消費税
会社によっては利子や配当金に対して支払う所得税なども発生する場合があります。
法人税とは、法人が得た所得に対して課される国税です。
法人税の税率は、法人の種類・資本金額・年間所得金額によって異なります。
法人税は、個人事業主が納める所得税よりも税率が比較的低く、最大税率も23.4%です。
たとえば、所得が800万円の場合、中小企業の法人税は15%である一方、個人事業主の所得税は23%となり、個人事業主にとっては負担が大きくなります。
税率についてはこちらをご参照ください。
法人税額は、課税所得に税率をかけて税額控除額を差し引いた金額で計算されます。
さらに、法人の場合は、自身の給与(役員報酬)も経費として計上することができます。
これにより、法人と個人への所得の分散が可能となります。
また、自身の給与からは給与所得控除も適用されるため、節税につながることもあります。
法人住民税とは、会社が登記されている都道府県や市町村に対して支払う税金です。
法人住民税は、法人税割と均等割の2つから成り立っています。
税率は地方自治体によって異なるため、ここでは東京都を例に説明します。
法人税割は、法人税額を基準として決まります。東京都では、資本金額と法人税額によって税率が異なります。
法人税割は、法人税額(税額控除前の税額)× 税率で計算されます。
均等割は、東京都の場合主な事務所がある市町村区や資本金額、従業員数によって税率などが異なります。
法人事業税は、事業所を持つ都道府県で事業を営んでいる法人に対して課される地方税です。
法人事業税の税額は、課税標準額(所得など)に税率をかけて計算されます。
法人事業税の税率は、法人の種類・資本金額・年間所得額などによって変動します。
事業や法人の種類に応じて区分し、開始する事業年度によっても変動する場合があるため、税率を確認するために、東京都の場合は東京都主税局のウェブサイトで確認することがおすすめです。
特別法人事業税は、令和元年10月1日以降に開始される事業年度から適用されることとなりました。
これは、法人の事業税の税率が引き下げられたことにより導入された税金です。
特別法人事業税は国税ですが、地方税である法人事業税と併せて申告と納付を行います。
特別法人事業税の対象は、法人事業税の納税義務がある法人です。
令和元年9月30日までに開始された事業年度については、地方法人特別税は廃止されましたことにより、それ以降に開始される事業年度から特別法人事業税が適用されます。
消費税は、個人事業主と同じ計算方法で求められます。
法人の場合、特定の条件が満たされると納税が免除されることがあります。
まず、期首の資本金が1,000万円未満であり、基準期間がない場合、設立した事業年度から1年間は消費税の納税が免除されます。
さらに、特定期間の課税売上高が1,000万円以下、または特定期間の給与支払額が1,000万円以下であり、かつ基準期間がない場合、2年目も消費税の免除の対象となります。
ただし、2期目の開始前に増資を行って資本金が1,000万円以上になる場合、または特定期間の課税売上高などが1,000万円を超える場合は、消費税の納税義務が発生し、課税事業者となります。
法人税は全ての法人に課されるわけではなく、一部の法人は法人税が課されません。
以下で法人税が課される法人と課されない法人を見ていきましょう。
法人税が課される法人には、普通法人と協同組合などがあります。
具体的な法人の例を挙げると、株式会社、有限会社、合名会社、合資会社、医療法人、相互会社、企業組合、監査法人、一般社団法人、一般財団法人(非営利型法人を除く)などが該当します。
協同組合などは軽減税率が適用されるため、税負担が比較的軽くなります。
普通法人の場合でも、資本金の額によって軽減税率が適用される場合があります。
法人税が課されない法人には、公益法人、人格のない社団、および公共法人があります。
具体的な法人の例を挙げると、公益社団法人、公益財団法人、非営利型法人、学校法人、宗教法人、社会福祉法人などが公益法人に該当します。
人格のない社団には、マンション管理組合、各種研究会、同窓会、PTAなどが含まれます。
公共法人には、地方公共団体、金融公庫、国立大学法人、地方独立行政法人、日本中央競馬会、日本年金機構、日本放送協会などがあります。
ただし、公益法人や人格のない社団については、法人税法により定められる物品販売などの収益事業で得られた所得は法人税の課税対象となります。
法人の所得金額は、益金から損金を差し引いた金額です。
益金は、売上収入や土地・建物の売却収入などによる収入を指し、損金は売上原価や販売費用、災害による損失などの費用を指します。
具体的な計算式は以下の通りです。
所得 = 益金(売上収入・売却収入・利益) - 損金(費用・損失)
ただし、益金と損金は法人税上の概念であり、企業会計上の収益や費用と必ずしも一致しません。
これは、企業会計上は費用となるが税務上は損金となるものや、企業会計上は費用とならないが税務上は損金となるものなどがあるためです。
そのため、企業会計による税引前当期利益から、法人税法に基づいて所得金額を算出する際には、所要の加算や減算を行います。
これによって最終的な所得金額が求められます。
加算:企業会計上は費用となるが税務上は損金とされない項目などを当期利益に加算します。
(一部の引当金への繰入額、一定額を超える交際費、寄付金の支出額など)
減算:企業会計上は費用とならないが税務上は損金とされる項目などを当期利益から減算します。
(欠損金の繰越控除、租税特別措置による所得控除、受取配当等の額など)
つまり、課税所得を求めるためには、企業会計上の当期利益に対して加算や減算を行い、税務上の所得を計算する必要があります。
・法人税(国税)
・法人住民税
・延滞税や延滞金などのペナルティー
・利子源泉、配当源泉、外国法人税
・消費税(税抜方式の場合)
法人税を納付しなかったり、税額が不足していたり、申告を怠ったりすると、通常の税金に加えてペナルティ相当の税金を支払わなければなりませんが、損金算入できません。
ペナルティを損金に算入することで、懲罰としての効果が薄れるためです。
消費税に関しては、税込方式の場合は損金に算入されます。
売上や仕入に関わる消費税が利益計算に含まれているため、納付する消費税も損金になります。
一方、税抜方式の場合は、売上や仕入に関わる消費税が損益計算書に含まれていないため、納付する消費税も損益計算書に記載されず、損金にも算入されません。
法人税を延滞すると、延滞税が課されます。
延滞税は、利息に相当するもので、法人税を納付すべき期限(法定納期限)の翌日から実際の納付日までの日数に応じて課されます。
納付が遅れるほど延滞税の税率が上昇します。
以下の場合に延滞税が課せられます。
・納税期限までに確定した税額を納付しなかった場合。
・納税期限後に申告書や修正申告書を提出し、追加で納税すべき税額がある場合。
・更生や決定の処分を受けた後で、納付すべき税額がある場合。
延滞税の率は、納付日数によって異なります。
特に、納付が2ヶ月を超えると、税率が著しく増加します。適切な納税期限を守ることが重要です。
法人が実際に負担する税金の割合を示すのが「実効税率」です。
実効税率は、法人税に加えて「法人住民税」「地方法人税」「法人事業税」などの税金を合算して計算されます。
実効税率は、法人の規模や所在地などによって異なります。
財務省の「法人課税に関する基本的な資料」や「諸外国における法人実効税率の国際比較(2023年1月現在)」によると、日本の標準的な実効税率は29.74%です。
ざっくりと言えば「おおよそ30%程度」と考えておくと良いでしょう。
ただし、正確な実効税率を算出したい場合は、税理士や会計士に相談しましょう。
この章では個人事業主にかかる税金を説明します。
個人事業主が営んでいる場合、所得税は1月1日から12月31日までの売上の合計額から必要経費を差し引いた事業所得にかかる国税です。
さらに、事業所得から必要経費以外の控除額(例: 配偶者控除、扶養控除)を差し引いた金額に対して税金が課されます。
ただし、所得税は累進課税制度を採用しており、利益が増えるほど税率も高くなります。
また、必要経費として認められる範囲が法人に比べて狭いため、高収入の場合は税金として徴収される割合も高くなります。
実際には、高収入の場合、利益のほぼ半分が税金として差し引かれることもあります。
所得税の計算式は、(売上 - 必要経費 - 所得控除)× 税率 - 控除額です。
税率はこちらをご参照ください
平成22年12月には、東日本大震災の復興対策のために「復興特別所得税」が設立されました。
この税金は、平成25年から令和19年までの25年間、所得税を納める義務のある方によって納付されます。
復興特別所得税は、「基準所得税額」に2.1%を掛けることで計算されます。
「基準所得税額」とは、所得税額から配当控除やローン控除などの差し引かれる金額を差し引いた後の所得税額を指します。
個人住民税は、住所地の都道府県や市区町村に支払われる地方税です。
毎年、所得税の確定申告を行うと、住民税の課税決定通知書が送られてきます。
個人住民税は、均等割と所得割の2つから構成されています。
均等割は、所得に関係なく一定額で課税される税金です。
例えば東京都の場合、都民税の金額は1,000円であり、市区町村民税の金額は3,000円です。
ただし、平成26年度から令和5年度までは復興特別税が追加されており、都民税と区市町村民税にそれぞれ500円が加算されています。
したがって、東京都では都道府県民税が1,500円、市町村区民税が3,500円となり、合計で均等割として5,000円が徴収されます。
均等割の金額は自治体によって異なる場合があるため、自分の住所が登録されている自治体の情報を確認することが重要です。
所得割は、前年の所得金額に基づいて課税されます。
所得金額は、売上合計額から必要経費を差し引いた事業所得から所得税額控除を差し引いた金額を指します。
所得割=(事業所得金額-所得控除)×税率-税額控除
税率は、都道府県民税と市区町村民税を合わせて10%が標準として設定されています。
個人事業税は、都道府県に納める地方税です。
法律で指定された業種の事業を行っている場合に課税されますが、ほとんどの事業が課税対象となっています。
税率は事業の種類によって異なり、範囲は3%から5%まで様々です。
個人事業税は、(事業所得+青色申告特別控除-事業主控除額)×税率で計算されます。(式において詳細な項目は省略)
上記の式の中で、事業主控除額として、1年間を通じて事業を行っている場合は、一律で290万円が控除されます。
そのため、年間の事業所得が290万円以下の場合は、個人事業税を支払う必要はありません。
消費税は、売上金額から仕入れや経費で支払った消費税を差し引いた額を納税します。
納税額は、課税売上高(税抜き)×税率 - 課税仕入高(税抜き)×税率で計算されます。
税率は一般的には10%で、そのうちの7.8%が国に納める「消費税」であり、残りの2.2%が地方自治体に納める「地方消費税」となります。
ただし、軽減税率の場合は、6.24%が消費税であり、1.76%が地方消費税です。
個人事業主の場合、前々年の課税対象売上高が1,000万円以下であれば、その年の消費税の納税が免除される特例があります。
つまり、課税対象売上高が1,000万円以上となった事業年度から2年後に初めて納税義務が発生することになります。
ただし、前々年の課税対象売上高が1,000万円以下でも、特定期間(1月1日から6月30日まで)に課税売上高または給与支払額が1,000万円を超えた場合は、即座に課税事業者となります。
また、支払った消費税のほうが受け取った消費税よりも多い場合には、消費税の還付を受けることもあります。
上記の他にもさまざまな税金が存在します。
以下、代表的な税金を紹介します。
個人事業主や法人が所有する自動車に課される税金です。
自動車の経費に関しては、法人名義の場合は購入費や維持費を経費として計上できますが、個人事業主の場合はプライベートと事業用の区別が難しいため、仕事で使用された金額のみが経費として認められます。
法人が所有する土地や建物などの有形固定資産に課される税金です。
税率は一般的に1.4%とされています。
個人事業主も土地や建物を所有している場合は固定資産税が課せられます。
また、事業を行っていなくても、個人所有の土地や建物に対しても固定資産税が課されます。
法人が納める税金の中で所得に課税される法人税などは、中長期計画を立てて、さまざまな税制を利用することで節税が可能です。
以下では、中小法人でも実施できる基本的な節税対策を説明します。
まず、節税の前提となるのが青色申告です。
青色申告では、複式帳簿の記帳と保存が義務づけられ、貸借対照表と損益計算書を作成する必要がありますが、欠損金の繰越控除などさまざまな税制上の優遇を受けることができます。
また、所得の控除や税額控除など、多くの制度が青色申告を前提としています。
青色申告の申請は簡単に行えますので、もしまだ白色申告のままであれば、直ちに所属する税務署に申請して、承認を受けるようにしましょう。
中小法人には税制上のさまざまな優遇措置があります。
これらの優遇制度を上手に活用することで節税が可能です。
例えば、交際費は通常は損金に算入されませんが、中小法人には特例があり、年間800万円まで損金として計上できます。
また、30万円未満の資産は取得費の全額をその年の経費にすることができます(ただし、年間300万円まで)。
さらに、一定の設備投資を行うと、所得控除や税額控除を受けることができます。
中小法人に対する税制優遇措置には期限が設けられているものが多くありますので、情報収集が欠かせません。
税額控除とは、納付すべき税金から差し引くことができる制度であり、納税額を軽減することができます。
税額控除は、租税特別措置法と法人税法による控除の2つに分けられます。
税額控除の対象となる資産や法人、適用業種、地域、計算方法は異なる場合がありますが、青色申告法人には例えば以下のような税額控除が認められています。
・試験研究を行った場合の税額控除
・高度な省エネルギー増進設備を取得した場合の税額控除
・中小企業等が機械等を取得した場合の税額控除
・国際戦略特別地域で工場用機械等を取得した場合の税額控除
・地方活力向上地域等で雇用者が増加した場合の税額控除
法人税は、法人や協同組合などの事業活動によって得られた所得に課せられる国税です。
普通法人や株式会社などが該当します。
税額は、税引前当期利益から必要な加算や減算を行い、課税所得を算出します。
そして、その課税所得に税率をかけ、税額控除額を差し引いて最終的な税額が計算されます。
法人税の節税には、さまざまな方法があります。
例えば、役員報酬を増やしたり、福利厚生を充実させたり、在庫を処分するなどの方法があります。
これらの方法を上手に活用することで、法人税の節税が可能です。
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